ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: デスゲーム ( No.2 )
日時: 2010/07/14 20:40
名前: ガイ (ID: HQL6T6.Y)

第2話

「記憶が……無い」

 柊斗は思わず呟いた。これから先、何が起きるのか。彼は不安だった。俺たちはどうなるのか。

「私の記憶も無いみたい……」

 消えて無くなってしまいそうな声を発したのは先程、柊斗の名前を読んだ女だ。豊よかな胸に付いているプレートには“双葉千帆ふたばちほ”と書いてある。その横には“22”と。年は自分と同じか。可愛 いらしい顔だが、瞳は力強さが感じられる。

「もしかしてここにいる全員の記憶も無いかもな」
「たぶん……」

 そう会話した時、突然叫び声が聞こえた。何か始まるのか。そう思った柊斗と千帆はとっさに声の主の元へ駆け寄る。そこでは自分と同じくらいの年の男が頭を抱えていた。

「どうかしたのか!?」
「いや、どうもしてないけど突然怖くなって」
 
 柊斗たちは拍子抜けした。ただの馬鹿か。

「もしかして俺を心配してくれたのか。そんならありがとな。俺の名前は……“兼平翔かねひらしょう”だ。ヨロシク」

 つんつんに立たせた短い髪が目立ち、整った顔をしている。明るそうな奴だ。しかし今そんな奴がいたとしても、うざったいだけだ。プレートを見ると柊斗と同じ22歳だった。彼も記憶がないのだろうか。そんな彼に、部屋の隅にいた男が声を荒げた。

「うるせーな。少しは黙ってろ!馬鹿が」

 声がしたほうを見ると、一目見ただけで近寄りたくないと思うような男が座っていた。金髪。獲物を狙う獣のような鋭い眼。服に隠れているが、大きな刺青が顔を覗かせている。プレートには“霧崎龍太郎きりさきりゅうたろう”とあった。年は柊斗たちよりも少し上なようだ。

「まったく嫌な奴……」

 翔がこう言いかけたその時、どこからともなく場内に能天気なチャイムが鳴り響いた。


柊斗達は誰一人気づいていなかった。
これから命をかけた死のゲームが始まるということを。