ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: デスゲーム ( No.6 )
- 日時: 2010/07/12 21:29
- 名前: ガイ (ID: HQL6T6.Y)
第5話
「畜生っ、迷路かよ!」
部屋を一番早く出た霧崎は第1ステージの舞台の建物の中で、どこへ行っていいのか全く分らなかった。蜘蛛の巣のように張りめぐらされた薄暗い通路の中で完全に迷ったことを自覚していた。コンクリートで固められた、天井まで3m位の通路では同じような風景なので余計そうなる。先程から分かれ道、行き止まりばかりで、全く自分が進んでいないように思えた。
「ん?なんだ」
ふと、突き当りで何かが動いたような気がした。心拍数が上がり、体中の血液という血液が駆け巡るのが分った。自然に体が震えてくる。思わずそこから目をそらしてしまった。
その時だった。どこからともなくとてつもない地響きがした。壁、いや建物全体が揺れた。それと同時に重いもので何かを叩いたような音もした。それもこの近くで。寒気が走り、もう一度何かが動いた場所を見る……と———そこから大きな黒い影がヌッと表われた。
「もう……怖いよ。こんな所絶対無理だよ……」
「大丈夫だって、なんとかなるさ」
弱音を吐く千帆とそれを励ます翔。聞くとこっちまで憂鬱になってくると思う柊斗。あの部屋を出てからというもの3人で行動していた彼らは、霧崎と同じように苦戦していた。今は一本道にいる。時計はないが既に10分は経っただろうか?いや20分?先程から同じような場所をグルグル回っているような気がして、時間の感覚が全くなかった。
「でも一体どこにいけばいいのかさっぱり分からないよ。なにかヒントでもないのかな〜」
翔がそう不満を漏らしたとき、偶然にもコンクリートでできた壁をじっと見つめていた柊斗は、ある事に気がついた。
「ん?この壁おかしくないか?」
「どうした?」
「なんかシミができてるぞ」
チラッと見ただけでは分からなかっただろうそのシミは、迷路のような形であった。……迷路?柊斗はもう1度そのシミをよく見てみた。記憶を呼び覚まして、さっき通ってきた道とそのシミを照らし合わせる。
「これ……この建物の地図なのかもしれない」
柊斗の言葉に続き、翔と千帆もシミを覗きこんだ。
「確かに地図みたい」
「すげえな」
今がここだとするとゴールは……。柊斗は頭の中で地図をコピー機のように正確にコピーした。何故かそ
れを忘れない自信が彼の中にはあった。これでクリアできる。そう確信した。しかし重大な存在を忘れていた。
「うわぁぁぁ、逃げろぉぉ!」
声のしたもと来た道を振り返る。そこには何かに脅えて逃げる、霧崎の姿があった。全速力で逃げており、あっという間に柊斗達の横を通り過ぎて行った。彼を追いかけるもの、思い当たる節は一つしかなかった。それは———鬼。