ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Episode 1 殺し合う『ふたり』 ( No.15 )
- 日時: 2010/06/30 14:55
- 名前: 禰音 鏡幻 ◆kaIJiHXrg2 (ID: cYSZrqDn)
私の頬を、夏の夜の生ぬるい風が撫でていく。
その風は湿っぽくて心地いい、死が直前に迫った私の汗をさらって行く。
私にはひんやりと冷えた無情な、それで居て心地いい…。
そんな夜の星空の元で、私の同級生が口を開く。
「ったくよォ、今の時代ビルの屋上で生きるか死ぬかのデスマッチってセンスはどうかしてるぜ、黒鳶ィッ!」
「そうかもね!死ぬのは君!決定!」
長い言葉に私は単語のみで返すと、妙に細長く、
丸い排気パイプの上を2人は相手目掛けて掛けていく!
私の手には刺身包丁、彼の手には木製の、
見るからに重量感がありそうなバットを構え、
私達2人は互いの生死を掛けて殺し合う!
この原因は、極限状態の今となっては覚えていない。
昼間に始まって、今は既に日が落ちている、
余程長い間動き続けていたらしく、私の体が悲鳴を上げるのがよく分かる。
「逃げる以外に脳が無いのかッ!」
「そうかな?どうだろうね?……どうだと思う?」
ビルの屋上はパイプに埋め尽くされ足場が悪い。
その地形を馬鹿な私が馬鹿なりに考え、
相手を殺すトリックを、ものの数分で考え付き、
逃げながらも準備をして、後は発動するだけだ。
ビルは30階建て、高さはおよそ45m。
落ちれば確実に死ぬし、落されればそれまでだ、
下で張っている警察のクッションなど、
落ちていく時の衝撃で軽減できる量の衝撃を吸収した所で死んでしまうのは目に見えている。
ただの気休めでしかない。
「ほら、どうしたよ !? 俺を殺すんだろ !? 」
私はその言葉を聞いて覚悟を決め、
彼の足元でトラップを発動した。
しかし、あろうことか私にそのトラップの端のロープが引っかかり、
2人とも、ビルから転落死。
………下の警察の会話………
「うわ…もうダメだな、検死官に死亡推定時刻を告げさせるまでも無い。…死亡時刻、両者共に午後8時……48分っと」
なにやらメモを終えると、警察官はその場で指示を始めた。
「そっちの男は…精神病院のD死体安置室へ持っていけ!こっちの刃物持った女はチャガラ区の安置所だ!」