ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Episode6  水入りバスケットボール ( No.26 )
日時: 2010/07/01 16:26
名前: 禰音 鏡幻 ◆kaIJiHXrg2 (ID: cYSZrqDn)

今、警報が鳴っている。
どうやらまた生徒間の揉め事で人が死んだらしい、
私が転入…いや、入学してきて早10日、
早速これが私を巻き込んでいく悲劇を生み出すとも知らず、
ただ、ただ私は無防備に学校生活へと向かっていた。
入学10日目、の3時間目の実技、場所は体育館。

「では、実技を始めます。入学して少しした1年生の皆さんにやってもらうのはこれです」

そういい、金髪仮面の先生は倉庫からバスケットボールを呼び寄せると、
親指と人差し指であたかも卵を潰すようにバスケットボールを潰して見せた。

「皆さん、ボールを持ちましたね?さあ、やりなさい!」

いや、説明もなしに無理があるだろう。
魔力の説明はあの時の男、サタンに一応聞いた。



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「良いか、魔力って言うのは魔族の生命エネルギーだと考えろ。もちろん、その魔力は人間だろうが魔族だろうが分け隔てなく存在している。魔力を持った人間が増えているといったが、人間は誰もが魔力を持ち、その魔力を利用できる者が魔法使いと言われたりするわけだ」

「その魔力はどう使えばいいの?」

「なに、自然と覚えるだろう。あの学校は常に危険だからな、常に気を張るってヒントは今与えた。ヒントの次は問題の基礎だな。流の魔力は一度死んで蘇っているがために膨大だ。死んだ後に死体に他の死体から漏れ出し空気中に霧散するはずだった魔力が相性の良い流の肉体に蓄積されているからだ。つまりは、今のお前は人間ではない、魔族となったのだ。魔族は魔力を使うがその反面、魔力が切れた時は弱体化どころではない、死だ。お前は常に魔力を空気から吸収しているが故、平気だとは思うがな。そうそう、使うのも手足を動かすように意識を集中すれば出来るから覚えて置くといい」



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そうだ、気を張るという作業を終え10日、
たった10日で魔力を見つけた!
あとはこれを操るだけだ、手足を動かすように、
ボールに意識を集中し、一気に魔力を流し込む!

バァンッ!

勢いよくバスケットボールは割れ、中に含んでいた空気を吐き出した。

「大変よく出来ました〜、早かったですね、ここまで速く…開始10秒で割った生徒なんて居ませんでしたよ。では今度はこれ、割ってください」

なんと、金髪仮面先生は、被っていたシルクハットからボールを出して見せた。
明らかに帽子の穴よりボールの直径の方が大きい、何でだ?
渡されたのは今しがた割ったのと同じバスケットボールだが、
何だ?やけに重いな。
しかし、重さが関係するわけでもないだろう、
さっきと同じようにボールに意識を集中し、一気に魔力を流し込む。
………もう10秒は魔力を注入し続けてる、
何で割れない?
量を増やしても、勢いを増しても、ボールはウンともスンとも言わない。

「君は魔力に頼りすぎよ、もっと手の方を見ておくべきね」

そう言うともう1回手で流の持っていたボールを指で潰して見せた。
中に水が入っていたらしい、水が割れ目から流れ出す。

「肉体強化系の魔法は苦手?先生の所に何時でもおいで、教えてあげるから」