ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Episode11  巨大クマムシ ( No.33 )
日時: 2010/07/01 21:01
名前: 禰音 鏡幻 ◆kaIJiHXrg2 (ID: cYSZrqDn)

ここまで攻められていた?
と言う事は、今このビルは敵に占拠されている可能性が高い。
つまりは、私たちの会話は監視システムでダダ漏れ、
そして、何処から何処へと移動しようとしているのかは、
監視カメラから見ることが可能!
今の私たちは敵の手の上に居る事になる!
しかし、それが分かっていてもなお、社長であるサタンは冷静だ。
直ぐにポケットからボタンの一つしかない何かのリモコンを取り出すと、
いきなりぼやき始めた。

「あ゛〜…始末書と後の処理が面倒だが仕方が無い」

その言葉と同時に、リモコンのスイッチをONにした。
すると、驚くべき事にビル全体の電気配線がショートし、
復旧不可能なまでに焼きついたのだ!
しかし、この手のビルには、自家発電のバッテリーが存在する場合が多いが、
自家発電のバッテリーは社長室、つまり私たちの目の前!

「バッテリーは壊すの?」

「氷漬けにして叩き割れ。そのままだと硬すぎる」

バッテリーを叩き割ると社長室を後にし、
廊下に出た所を床をぶち抜き下のフロアへ移動する!

「魔王だ!戦闘配置に着け!」

いくつか下のフロアで敵に見つかった。
サタン=魔王…つまり、
かなり凄い実力者だったのか、
この偉そうな長髪ヤローは。
そんな考えを見透かしたかのように、サタンは流に殺意のこもった笑みを向けると、
敵の魔法が発動する前に、躊躇無く全員の首を何処から取り出したのか、
一瞬の内に大鎌で刈り取って見せた!

「気持ちワル」

「じきに慣れる。この会社は社員ゼロだ、昨日の内に全員非難させておいた。だから流と私で取り返す」

その言葉の直後、サタンの髪の影から小さな黒いモルモット……?
恐らく小さな龍であろう生き物が顔をのぞかせ、
自分の存在を知らせるかのように雄たけびを上げた。

「ああ、お前も居たな。紹介しよう、私のパートナーのハデスだ。私が魔力を与える事で一時的に成体に進化する黒龍と考えろ」

余裕をかまして喋っていたその時だった、
そいつが現れたのは……。
直ぐ近くの研究室の戸を、いとも簡単になぎ倒し、
中から大きな熊の様な8本足の生き物が……。

「マズイな、クマムシだ」

クマムシ?
虫?

「…何それ?」

「151℃の高温から絶対零度、つまりマイナス273.15℃まで耐える生物を進化させ、巨大化させた。通常は乾いてからでなければその温度には耐え切れないが、コイツは通常状態でそれに耐えられる。その上、コイツは自重の300倍の物を持ち上げられる。今のコイツは人間を食べただろうから非常に力が強い」

…………私は虫が嫌いだ。
多分、今まで最も出会いたくない虫に出会ってしまった。

「……何で虫なのよ〜!」

「仕方あるまい、この星で最も強い生命体を創ってみたかったのだから。ちなみに、クマムシは虫ではない*緩歩動物*に属する動物、と言っても分かるまい、簡単に言えば微生物だ」*かんぽどうぶつ*

「仕方なくないし、そんな事今は関係ないよッ!」

サタンは手袋を外し、先頭の順位を始め、それに答える。

「それもそうだ、骨の折れる相手だが、殺すぞ!」