ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Episode12 壊れない生物 ( No.34 )
- 日時: 2010/07/02 14:30
- 名前: 禰音 鏡幻 ◆kaIJiHXrg2 (ID: cYSZrqDn)
流はその場に立ち尽くし、クマムシと睨み合う。
もちろん虫嫌いの流の事だ、睨まれているのは流であると誰が見てもそう思うだろう。
正に、その通りだった。
今の流は蛇に睨まれた蛙、相手が近寄ってきても、
恐らく一歩たりともその場から動けないだろう。
「………………」
「どうかしたか?たかがクマムシ、死ににくいタフさを除けば大した事は出来ん」
その言葉通り、サタンが先ほどから何度も鎌で首を切り裂こうとするが、
ことごとく鎌がクマムシの体に負け、刃こぼれを起している。
「ここまで壊れない生物は魔界にも居まい、流!」
「は…ハイッ!」
「記念に生きている奴を触って見ないか?硬いぞ!」
………………………………………………………………………………
沈黙の時間が周囲を凍らせ、クマムシの動きを止めた。
恐らく、サタンと流の存在に気が付いたのだろう、
顔の無いクマムシがこちらを向いた。
正しくは、顔であろう部位がこちらに狙いを定め、
何が居るのかを探っている。
「いや…いや…!」
「触らないのか?ならばいい、殺してしまおう」
サタンの発言と同時に、クマムシは流に突進する!
流との距離は、およそ10m。
走った巨大クマムシの足は…恐ろしく速い!
「そっちへ行ったぞ!氷漬けにしろ!」
「……………………」
声が出ない状態で、流は寸前まで迫ったクマムシに指を向け、
周囲から液体窒素を精製し、クマムシに浴びせる!
液体窒素の温度は、マイナス198℃!
砂糖の混ざった飽和水溶液ですら一瞬で凍らせてしまう温度!
しかし、クマムシはゆっくりとだが、凍りついた体を無理に動かし流へとなお迫る!
そして、流に触れるか触れない鎌で近づいた時だった、
前足が…それに続き後ろの足が崩れ、
その体重を支えきれなくなった足が全て崩壊、
床に体が叩きつけられた衝撃で、
クマムシは粉々に砕け散った!
「もぉ〜!凄くびっくりしたよ〜 !! 」
「では、遊んだ所で先を急ぐぞ。スタンガンパニックがまだこの会社に居ればいいのだが…」
もう既に学校へと向かっているかもしれない…、
そんな不安を胸に、2人はビルの奪還を再開した。