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   Episode20  夏祭り【強】       ( No.53 )
日時: 2010/07/09 20:18
名前: 禰音 鏡幻 ◆kaIJiHXrg2 (ID: cYSZrqDn)

敵を圧倒し高笑いしているサタンを何者かの攻撃がかすめる!
この刃の嵐の中そんな芸当が出来るという事は、
かなりの手練か、それこそサタンとの相性が最悪の魔術を得意とする何者かだ。

「フゥム…。誰だか知らんが、我に喧嘩を売る気で居るらしいな、どれ…。多少手荒な方法だが死にはせんだろう」

そう言うと、サタンの中指が周囲の影という影を指し、
6つ目の木の陰で止まると、糸を手繰り寄せるかのように引いた。
それと同時に刃の嵐が止み、周囲を敵兵の死体の臭いが包む。
影から出てきたのは…20代行かないであろう若い男だ、
……結構イケ面。

「ん——…?何の冗談だ、ハギラ」

「何の冗談って…決まってるだろ?俺はこの世界が憎い、そんな世界が目の前にあるのだから…チョット滅ぼそうと思ってね」

世界を滅ぼす?そんなことは不可能に近いが、
不可能に"近い"だけで私の時代でも可能だった。
核爆弾を地球の隅々まで落とせば、一瞬の内に生命は滅ぶ。

「世界を滅ぼす…ならば核爆弾でも使えばよかろう?何故わざわざ人間を少しづつ殺すという作業に明け暮れているのだ?」

「俺の滅ぼしたい世界は人間の居る世界だ、他の生き物を巻き込む、…つまり第3者を巻き込んでは俺のポリシーに反する」

第3者を巻き込んでは俺のポリシーに反する?
普通にその不毛な憎しみによる殺人の時点で巻き込んでいるだろうが、
何を言っているのだ?この男は?

「第3者?フン、我もその第3者であろうが。我は魔王であるぞ?」

「ああ、そうか!君も第3者…いや、4者か。地上の人じゃないモンね!じゃあ、ボクも地上を守るために戦わないといけないな!」

ハギラと呼ばれた男は、右足を軸に左足で円を書いた。
円は自然の循環を意味し、その内部でこの場に引き込む力を陣として書き込む!
のだが、そいつはその円に手を載せるだけで発動した !?

「ッ!馬鹿な!」

瞬時にサタンは体をわずかにずらし、飛んでくる光弾を紙一重で避ける!
それを見て、ハギラが軽く笑みを浮かべる。
そう、その光弾はサタンではなく私たちへと放たれた物!

「危ない!」

千里が刀で応戦し、見事に地面へと叩きつける!
それを見て、

「チッ!」

っと舌打ちしながらまた別の角度から光弾を飴のように飛ばす!
その光弾を避けるのは無理に近い!
だが、無理に近いだけで必ず何らかの突破口は存在する!
何処からでも飛んでくる光弾…。

「分かったよ!その弾の発信元!」

流がハギラへと突進する!
自分へと飛んでくる光弾の量が、
ドンドン増える。
予想通りだ、奴の光弾は危険順位で上位の者から順に数を増やし、
危険な者を排除する仕組み!
そして、奴の魔法発動の鍵は…!
流はサタンの直ぐ横を通り抜け、ハギラの前まで間合いを詰める!
危険を察知したハギラは地面に着けていた手を流へと向ける!
そう、魔方陣の中身だけ手に彫っておけば円だけで発動できる!

「よく分かったな、だが…勉強不足だお譲ちゃん」

そいつの手に彫ってあったのは…ヘキサグラム!
マズイ!避けなければ!
最後に放たれた光弾をスレスレで避ける!

「ペンタグラムじゃ…無い?」

そいつはまたもやククっと笑う。
何だか気持ちの悪い奴だ。

「ああ、そうさ。ボクはヘキサグラムを使う魔界の本格魔術を扱える。というか、それしか扱えない」

ペンタグラムとは…この地上に存在する5属性を現す、火、雷、水、風、土の5属性、
それに、魔界の魔が加わりヘキサグラムとなる。
そのため、魔界への門を開く時などはヘキサグラムを使用する。
この男の行為は魔界への小さな門を開き、
そこから一気に地上へ魔力エネルギーを飛ばすというやり方だ。
それ故、地面に接している限り奴の攻撃はどの方向からでも飛んでくる!

「まったく、出会いたくない人だったみたいね」

「流、愚痴を言う暇があったら奴を殺すぞ?」

「りょーかい、社長サン」