ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: ━ESP━『エスパー』36話うp♪ ( No.132 )
- 日時: 2010/07/18 14:55
- 名前: 遊太 (ID: KF4wky37)
37【塔子との出会い】
3年後
東京支部 13階社長室
冥堂はデスクに座り、任務の資料をまとめていた。
両脇には円、紅月が立っている。2人はまだ入社したばかりだ。
「・・・・・神谷、あいつの居場所はまだか・・・・」
冥堂はパソコンに向かって誰かと話している。
相手は、千葉支部に移転した元東京支部の社員である草屋だ。
「全然です。彼の性格や感情を考え、ありとあらゆる場所を探しましたが、どこにもいません。」
「そうか・・・・・」
冥堂はパソコンの電源を切ると、デスクに俯きため息をつく。
あの時のAチームメンバーは、神谷以外は全員死亡。
丸焦げの姿となって発見された。
「円、紅月。副社長はどこにいる?」
「彼はいません。どうせ、仕事をさぼって遠出したのでしょう。」
冥堂はその言葉を聞き、再び大きなため息をついた。
副社長は仕事もせず、月一の会議にも出席せず、それどころか滅多に会社に来ない。
「まったく・・・・副社長は・・・・・」
**********
東京 港区 遊星孤児院
「それでは、この契約書にサインを・・・・・」
孤児院の個室に、天馬の両親は訪れていた。
英明は契約書にサインをすると、ペンを置いて施設員に渡す。
「・・・・確認しました。それでは、塔子ちゃんを引き取ってもらいます。塔子ちゃん!!」
施設員が叫ぶと、個室の扉が静かに開いた。
まだ中学1年生の塔子は、恐る恐る部屋に入ってきた。
「彼女、以前に虐待にあっていまして・・・、あまり人に心を開かないんです。」
「そうなんですか・・・・・」
英明は立ち上がると、塔子の前にしゃがみ込む。
「今日から君の父さんになる。お兄ちゃんもいるぞ!!たくさん遊んでくれる優しい兄ちゃんだ!!」
英明は由美子の顔を見ると、由美子は満面の笑みで塔子を見た。
塔子は2人の優しさに険しい顔を和らげる。
英明は塔子と手をつなぐと、施設員に一礼をして由美子と塔子と共に家へ戻った。
────────
「ただいま。」
英明、塔子、由美子が家の扉を開けると、まだ中学2年生の天馬が立っていた。
「おかえ・・・・あっ、行ってきたんだ。」
天馬は事情を知っており、塔子を笑顔で迎えた。
「さあ、お兄ちゃんよ。夕御飯ができるまで遊んでていいわよ。」
由美子はそう言うと、英明と共にリビングへと向かって言った。
「・・・・名前は?」
「塔子。お、お兄ちゃんは?」
「俺は天馬。呼び捨てでいいよ。」
天馬は塔子の頭をなでると、手をつないで自分の部屋に入った。
「天馬・・・さん。私は、また虐待されるんですか?」
「え?」
天馬は塔子の言葉に驚き、足が止まってしまう。
「な、そ、そんなわけないじゃん。家族なんだから。」
「かぞ・・・・く・・・・・・」
塔子は天馬の言葉に涙を流し、思わず腹めがけて抱きついてきた。
「うっ!!」
天馬は思わず唸り声を上げた。
「うっ・・・・うっ・・・・ありがとう・・・・・」
塔子は泣きながら天馬に言うと、天馬は言葉が浮かばずただ見ていることしかできない。
「と、とりあえず、夕ごはん食べよう!!」
天馬はそう言うと、塔子の手を引っ張りリビングへと向かった。
**********
遊星孤児院
「しかし、塔子ちゃんは良かったですね。」
施設の責任者である沖田春雄は、顎鬚を触りながら施設員に言う。
「そうですけど、ほかの孤児たちも早く引き取り相手が見つかってほしいです。特に、102号室の男の子なんて・・・・」
施設員の言葉に、沖田は首を傾げて質問する。
「そこにはだれが?」
「神龍璽亜門という中学生です。確か、両親が某会社の社長だったんですけど、株の暴落で借金に追われる生活になって、自殺して施設に来たんです。」
施設員はお茶を注ぐと、沖田に渡す。
沖田はお茶をすすりながら顔を顰めた。
「ふむ・・・・あの男の引き取ってくれるかもしれん。」
「あの男?どちらの方ですか?」
施設員の質問に、沖田は壁に飾られた無数の写真を指さす。
「彼だよ。私の古い友人でね、名前は木藤優太。アメリカに住んでいて、向こうではエリゴス・アーサーという名前だったかな?」
沖田はそう言うと、施設員の顔を見る。
「まあ、孤児たちが幸せと思うようにしてやればいい。」
沖田は立ちながら言うと、部屋を出て行った。