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- Re: ━ESP━『エスパー』45話うp♪ ( No.153 )
- 日時: 2010/07/27 18:15
- 名前: 遊太 (ID: KF4wky37)
46【能力を2つ持つ男】
轟音や煙がいくつも上がる東京の街中。
高さ20階の高層ビル群の屋上にいる冥堂は、光の槍を手に持ち構えた。
「社長、私に勝てるのですか?」
「あの時はまだ弱かったが・・・今は違う。」
バエルはその言葉を聞くと、鼻で笑い両手を前に出す。
すると、漆黒の雷がバリバリと音をたてながら発生する。
亜樹の使う電撃とは違い、何か危ない雰囲気を漂わせている。
「あなたには、消えてもらいます。」
ダン!!
バエルは思いっきり地を蹴り、2メートルほどジャンプし舞い上がる。
すると、そのまま両手を前に出して冥堂に落下してきた。
「ふん!!」
冥堂の持つ光の槍とバエルの漆黒の電撃がぶつかり、金属音の様な音が周りに響く。
「あなたが弱いんじゃない!!私が強すぎるのだ!!!」
ヒュン!!
バエルは素早い動きで冥堂の背中に回り込む。
そして、そのまま漆黒の電撃が帯びた右手で背中を殴った。
「効かん!!なめるな!!」
冥堂の体は光に変わり、バエルは冥堂の体をすり抜けて攻撃をかわされた。
「・・・・これはどうですか?」
バエルは両手を合わせ、目をゆっくりと閉じる。
「ボディチェンジ‘ジルチ’」
バエルはカッと目を開き、大声を出して両手を合わせたまま電撃を放出する。
すると、大気が震え始め、バエルの皮膚は段々と黒く染まっていく。
「社長、あなたは頭が良い・・・。だが、やはり勝因は・・・・」
「力の差」
バエルがその言葉を言った瞬間、冥堂の体は後ろに弾き飛ばされた。
「な!?」
冥堂は地面に叩きつけられる前に体勢を戻し、踏ん張って地面に立った。
前を見ると、バエルの姿がいつの間にか消えていた。
「どこだ・・・・?」
冥堂は辺りを見渡すが、バエルの姿は見えない。
耳を澄まして気配を感じ取ろうとするが、聞こえるのは東京の街が破壊されていく音だけ。
「神谷!!どこだ!!」
冥堂が叫んだその瞬間だった。
ズドォォォォォン!!!!!!!!
突如、冥堂がいるビルの屋上が轟音を上げて崩れ始めた。
そして、真下から黒く染まった両手が冥堂の首を掴んだ。
「がは・・・・・」
「これこそ、神が与えた本当の超能力!!私の能力は死者蘇生じゃない!!生死を操る力だ!!」
バエルは皮膚が黒く染まり、目が真っ赤に充血している。
さらに、背中にはコウモリの様な羽が生えている。
バエルはそのまま冥堂の首を掴んだまま、空高く舞い上がる。
「離せ・・・・」
冥堂は能力を使おうとするが、なぜか能力が使えない。
バエルは冥堂の苦しむ姿を見ると不気味に笑った。
「教えてあげましょう。東京は私の仲間が結界を張り、外部からの侵入を防ぎ、内部にいる者は逃げられない。あなた達は、籠の中の鳥ですよ。」
バエルはある程度の場所で止まると、冥堂と向かい合うようにする。
「能力が使えないのは、あなたの血から能力のある成分を抜き取ったからだ。」
「なっ!?そ、そんなバカな・・・・」
冥堂はバエルの突然のカミングアウトに、言葉を失った。
そんなことができるはずがない。
「私の能力は生死を操る力。そんなことはできるはずがないと思っているでしょう?」
「当たり前だ・・・・」
バエルは冥堂の首を掴む手を少し緩めると、東京の街を見下ろしながら言った。
「私は異例です。能力を・・・2つ持っている神に選ばれた者なのだ・・・・」
バエルは冥堂の耳元で囁くように言うと、静かに冥堂の首から手を離した。
「貴様は・・・・最低だ・・・・」
冥堂は何もできないまま、そのまま東京の街へと落下して行った。
「最低?違いますよ、最高だ。」
バエルは落下していく冥堂につぶやくと、そのままどこかへと飛び去って行った。