ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: ━ESP━『エスパー』17話うp♪ ( No.67 )
- 日時: 2010/07/05 20:59
- 名前: 遊太 (ID: KF4wky37)
18【いざNPSへ】
夏休み初日
天馬は家族に‘友人の家に泊まる’という口実を言い、この日は会社の任務に励んだ。
集合場所である会社地下駐車場に着くと、すでに全員が集まっていた。
「よし、天馬は移送車に乗れ。俺と算介は移送車の後ろから別の車で護衛する。」
天馬、亜樹、算介、三郎の4人は真っ黒な大型移送車の前にいた。
移送車は見るからに頑丈そうで、ちょっとした攻撃では傷がつきそうにない。
天馬が移送車の後ろに乗り込むと、手足を拘束され、目隠しをされた火山が乗っていた。
火山は衰弱状態で、顔色も良いとは言えない。
「やあ。君が天馬君か、社長から色々と聞いてるよ。」
火山の隣には腰に刀を持つ木枯紅月が座っていた。
天馬は先輩である紅月に一礼すると、火山と向かい合うように座った。
天馬の隣に亜樹が座り、最後に村佐円がドアを閉めながら入ってきた。
「亜樹、念のためにあなたは助手席に移動して。」
円は腰につけていた刀を外し、手入れを始めながら言う。
「なんで?別に大丈夫じゃない?」
「念のためよ。社長もかなり警戒してるし、絶対に成功させるの。」
円の言葉で、亜樹は渋々助手席に移動した。
天馬は火山をチラリと見ると、以前高校を襲撃した時のことを思い出す。
「こいつも・・俺と同じ能力か・・・・」
火山は天馬と同じ発火能力を持つ能力者。天馬は同じ能力者が対立するを不思議に感じた。
「え〜っと、それでは今からNPSに向けて出発します。運転は三木がしまーす!」
運転席から聞こえる若い声に、天馬は呆気を取られる。
すると、向かいに座る紅月が笑顔で天馬にしゃべりかけた。
「あいつはいつも陽気なんだ。君とは入社1年しか変わらないしな。」
円はその言葉を聞くと、なぜかクスクスと笑い始める。
天馬は円になぜ笑っているのか質問した。
「え?だって、あなた三木と全然違うから・・・」
「三木はな、入社当時かなり緊張して先輩のお荷物だったんだ。それに比べて、天馬君は頑張り屋だな。」
紅月の言葉に、天馬は頬を赤らめ照れる。
そして、移送車は千葉にあるNPSに向けて出発した。
**********
千葉 県境
出発から2時間.....
最初の注意点だったレインボーブリッジは、何事もなく通過し、第2の注意点に追突した。
「ったく・・・渋滞だ・・・・」
運転する三木は、果てしなく続く渋滞を見てため息をついた。
「マリンメッセでアイドルのコンサート・・・まったく・・・・」
亜樹もため息をつき、窓を開けて涼しい風にあたる。
後ろに乗る天馬達は、クーラーのおかげで快適な任務となっている。
あまりの気持ちよさに、円は刀を枕に転寝をし、紅月は刀の刀身を丁寧に拭いている。
「アイドルってそんなに人気があるのか?」
紅月は面倒くさそうに天馬に質問する。
「分かりません。でも、個人差じゃないですか。こっちの身にもなってほしいですよ。」
「だな!!」
紅月は笑いながら天馬を見る。
天馬は自分の後ろにある小窓を開け、外を見渡す。
確かに渋滞は結構距離があるものだ。
この様子だと、目的地につくのは夕方頃か・・・。
「この進み具合だと、ホテル泊まりか・・・」
紅月はそう呟きながら、携帯を取り出しどこかに電話をかけ始めた。
『あ!社長ですか?お疲れ様です。ホテルの手配お願いしたいんですけど・・・』
『そうか・・・やはり渋滞が原因らしいね。分かった、頼んでみるよ。』
『ありがとうございます。』
紅月が携帯をポケットにしまう。
「ホテルですか!?」
「あぁ。・・・なんかうれしそうだな。」
「え?」
天馬は自分が若干笑顔でいることに気付く。
無理もなかった。まるで、修学旅行みたいで面白そうだしこんなワクワク、中学の時以来だ。
天馬は上機嫌になり、小声で鼻歌を歌い始める。
この時、誰もが任務成功を確信していた。
が、それはあくまで思い込みだった_____
**********
移送車の後方 算介と三郎の乗る車
会社専用の車に乗っている算介と三郎は、移送車を見失わないように気をつけていた。
理由は簡単。渋滞にはいれば、移送車を見失う可能性があるからだ。
助手席に座る算介は、iPodで音楽を聴きながら悠長にも漫画を読んでいる。
「おい、気を引き締めろ!」
「大丈夫でしょ。向こうにはベテランが3人に天馬もいる。それに、運転手も能力者でしょ?」
算介は何故か笑いだす。どうやら、漫画が良いところらしい。
三郎は注意するにも呆れ、ため息をつきながら外を見た。
マリンメッセスタジアムが見え、その向こうから渋滞が消えかかっている。
「やっと渋滞から抜けれる・・・」
三郎が安堵の息を漏らしたその時だった。
「ん・・・?」
三郎の視界、マリンメッセの入り口付近に一瞬だが黒いコートにフードを被った不審者が見えた。
「おい、今の見たか!!」
「へ?あー、ここ面白いですよね!!」
「漫画じゃない!!あそこだ!!」
三郎は算介の頭を叩き、前に指を指す。
算介は叩かれた個所を撫でながら、指さす方向を見た。
すると、確かに不審な人物がフード越しに移送車を見ている。
「アイドルのファン・・・じゃなさそうですね。」
「移送車に連絡しろ。嫌な予感がする。」
三郎にいわれ、算介は携帯を取り出し天馬に電話をかける。
しかし、事態は最悪な方向へと一直線に向かうのだった______