ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: ━ESP━『エスパー』18話うp♪ ( No.70 )
日時: 2010/07/07 07:16
名前: 遊太 (ID: KF4wky37)

19【新たなる脅威】

マリンメッセ 入口

アイドルのコンサート目当てに混み合う入り口。
そんな場所に、黒いコートを着て顔をフードで隠した謎の人物が移送車を見ていた。
「あれか・・・シャドウ。お前の能力で例の場所まで移動しろ。」
フードから聞こえる男の声。その男の後ろには同じ格好をした人物が音もなく現れた。
「俺の専門外だが、いいだろう。」
シャドウはそういうと、両手を遠く離れた移送車に向ける。

「シャドウ・フォール」


**********


移送車


運転席に座る三木は、渋滞の終点につくと安堵の息を漏らす。
「やっとだぁぁ!!」
助手席に座る亜樹も、渋滞の終わりに笑顔になる。
その時だった。

ガコン!!

突如、何かがはずれたような音が聞こえ、移送車が小刻みに揺れ始める。
「ん?地震か?」
「え?・・・・ちょっと待って!!外!!」
亜樹は窓を開け、移送車の下を見た。
どういう理由か、移送車が地面に沈んでいく。亜樹と三木はこの異変に気付くと、辺りを見渡す。
その時、亜樹の携帯が車内に鳴り響いた。

『三郎さん!!車が!!』
『分かってる!!スタジアム付近に不審人物が2名。その内の一人が手を移送車に向けている。』

亜樹はその言葉を聞き、スタジアムの入り口を見た。
確かに、フードを被りロングコートを着た2人組がいる。

『どうしますか!?』
『ここでの戦闘はまずい・・・渋滞を抜けたら一般道に入れ!!』
『了解!!』

三木は携帯から聞こえた三郎の指示通りに車を動かした。
渋滞を抜けると、高速を一気に下り一般道を走行し始める。
しかし、車は進むが地面に飲み込まれて行く。
「このままじゃ移送車は完全に・・・」
「・・・・飛び出すわよ!!」
亜樹は三木に言うと、三木は無線を取り出し、後ろに乗っている天馬達に呼びかけた。

**********

先ほどの揺れを不審に思った天馬、紅月、寝ていた円は戦闘態勢に入る。
「お、おい、大丈夫なのか?」
手足を拘束され、能力を使えない火山は不安そうに質問する。
しかし、3人は聞く耳を持たない。

『皆さん!!移送車から飛び降りてください!!緊急事態です!!』

「はぁ!?」
円はため息をつきながら、渋々ドアを開けた。
ドアは豪快に開き、中に風が一気に入り込んでくる。
「俺はこいつを運ぶから、天馬君と円は先に降りろ。」
紅月はそう言うと、火山の拘束を外し始める。
拘束は椅子部分にも固定して付けているため、一々外さないといけないのだ。
「行くよ!」
「は、はい!!」
天馬と円は同時に飛び降りた。

「よっと・・・」
「痛った!!」

円はさすが先輩でもあり、軽々と着地する。しかし、天馬は着地はしたが、足を躓かせた。
2人は後ろを振り向き、前の席から飛び降りる亜樹と三木を見る。
2人も平気に飛び降り、車はそのまま停止した。
紅月と拘束された火山だけが、まだ降りてこない。
「私、行ってくる。」
円は剣を構えて移送車に走って行った。
と同時に、天馬の後方から算介と三郎を乗せた車がブレーキ音を上げて急停車する。

「天馬!!」

三郎と算介は天馬に駆け寄る。
亜樹と三木も天馬達の元へ駆け寄ってきた。
「やばいですよ!!移送車、もう半分も地面に・・・」
三木が脅えながら移送車を見る。
5人は移送車を見て、最早出てくる言葉がない。

移送車の半分は地面に吸い込まれ、もう移動不可能という状況になっていた。

「紅月!!急げ!!」
円が沈んでいく移送車に近づく。その瞬間だった。

「嬢ちゃん、消えな。」

「え?」

円の横に、タキシードを着た謎の男性が現れた。
全員、男性が現れた瞬間が見えなかった。
男性は右手で円の頭を鷲掴みすると、そのまま投げ飛ばす。
「き、きゃぁぁぁ!!!!!!!!」
円は男性のありえない腕力に驚き、刀を落としてそのまま近くに止めてあった車に突っ込んだ。
「円!!」

「お前も・・・くたばれ・・・」

天馬たちは突然の声に後ろを振り向く。
算介と三郎の車の上に、先ほど見たコートを着た男性2人が立っている。
1人は白髪が腰まであり、右目に大きな切り傷がある。
もう一人の男はウエーブのかかった漆黒の髪をもつシャドウ。
「な!!クライムの仲間か!?」
三郎は両手をドリルに変え、2人に尋ねる。
「・・・知らん。我々が貴様らに教えることはない。」
白髪の男がそう言うと、シャドウが手を地に付けてそのまま自分の影の中に2人同時に消えた。
天馬はシャドウの能力を見てようやく理解する。
移送車が地面に沈んでいるのは、影に飲み込まれているからだ。
5人が後ろを振り向くと、中に取り残された紅月と火山が移送車ごと影に飲み込まれた。

「バッハッハ〜イ♪」

タキシードを着た男性は手を振りながら移送車の上に立ち、そのまま移送車ごと影の中へと消えた。