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Re: ━ESP━『エスパー』23話うp♪ ( No.85 )
日時: 2010/07/12 16:42
名前: 遊太 (ID: KF4wky37)

24【千葉支部】


翌日


今日から9月に入り、段々と暑さも引いてきた。
天馬は昨日のことを隠しつつ、会社に訪れていた。
「おっす!おはよう天馬!」
天馬が会社に入ると、受付の近くにあるソファーに算介が座っていた。
漫画を読み、とても能力者とは思えない姿をしている。
しかし、天馬はあえてスルーした。
「天馬、結構やばいぜ・・・」
算介は漫画を自身のバックに入れながら言う。
「何がですか?」
「千葉支部が来るらしい。移送任務の失態が、結構あちこちで影響与えている。」
算介は立ち上がると、受付の方に指を指す。
天馬も受け付けを見ると、そこには普段見ない人物が3名立っていた。
「誰ですか?あの人たち・・・」
「敵に備えた上層部の能力者だ。クライムの様に、公共の場に平然と現れる敵だからな。警戒してんだよ。」
天馬は算介の言葉で、百宮学園高校襲撃のことを思い出す。
確かに、一般市民を巻き添えにして戦う奴らかもしれない。

「天馬!算介!!社長室に来い。」

2人の後ろから、三郎が声をかけてきた。
「なんでこんな朝早く・・・」
「文句言うな!!急いで来い!!」
三郎にいわれ、2人は顔を合わせると社長室へ向かった。


**********


13階 社長室


全面窓張りの壁から、朝の太陽が気持ち良い日光を照らす。
社長室につくと、そこには見たことのない3人の男性と1人の女性が立っていた。
天馬は首を傾げ、隣にいた算介も呆然と4人を見ている。
「おぉ!!来たかね。」
社長は椅子から立ち上がると、手招きで天馬達を呼ぶ。
天馬と算介は社長の傍に来ると、4人を前方から見る。

「おはようございます。千葉支部からやって参りました副社長の東駿介と申します。」

きっちりと整えた髪に、黒メガネをかけた東は天馬と算介に言った。
天馬は東の右をふと見る。すると、そこには先日助けてくれた荒井が立っていた。
「あっ!!」
天馬は思わず声を出す。
すると、荒井が舌打ちをして微かに首を横に振った。
昨日のことはまだ、ばれていないようだ。
「今日は千葉支部社長の代理できました。あなた方の失態を消すためにね。」
東はそう言うと、社長に近づき一礼する。
「ほう・・・・。では、あなた方はどうするつもりかね?」
「ここに選抜された千葉支部の能力者を配置します。仕事には害は出ません。」
東は振り向き、一人の男性に声をかけた。

「紅夜、彼は前任の木枯紅月の穴埋めです。」

東の言葉に、天馬は疑問を抱く。
前・・・任・・・・・
「お、おい!!ちょっと待てよ!!」
算介もその言葉に気付いたらしい。
「どういうことだよ?前任って・・・・・」
「聞いてないのですか?」


「木枯紅月は、昨日太平洋海上で遺体で発見されました。」


東は、表情を変えずにサラリと言った。
「え?」
天馬と算介は、一瞬頭が真っ白になる。
社長の表情を変わらず、どうやら知らなかったのは天馬と算介だけだったらしい。
「遺体は上半身しかなく、頭部は紛失。下半身は現在も見つかっていない。」
天馬と算介は、リアクションの取り方も分からない。
東はそんな2人を無視して話を進める。
「会社の方は荒井吭、私と露霧奏音がいます。紅夜はあなたに付けておくので、ご安心を。」
東は笑顔でそう言うが、それは笑顔ではない。目が笑っていないのだ。
「・・・・いいだろう。」
社長はため息をつきながら承諾した。
「それでは、お願い通りそこの2人には退職ということで・・・・」


「はぁ!?」


天馬と算介は、再び東の言葉に驚愕する。
一体、話はどう進んでいるのだ!?
「しゃ、社長!?」
「分かった。そこの2人は今日中に強制退職させる。」
社長は天馬達の意見も聞かずに承諾した。
東は荒井に指示を出すと、2人は荒井に腕を引っ張られ無理やり1階へと連れて行かれた。


**********


「お、おい!!ちょっと待てよ!!!」
2人は荒井に引っ張られ、地下駐車場に連れて行かれた。
「早く行け。もう、この会社には来るんじゃねぇぞ。」
荒井はサングラスを外すと、天馬の顔を見る。
「お前ら、社長は恨むな。お前たちを思って、この判断をしたんだ。」
荒井の言葉に、2人は顔を合わして首を傾げる。
「どういう・・・ことですか?」
「今回の敵は、恐らくお前ら若いのがいたら危険だ。木枯紅月の殺され方を見て判断したんだ。」
「・・・・本当に死んだんですか?」
天馬が聞くと、荒井は何も言わずに目をそらす。
その瞬間、天馬の目から一滴の涙がこぼれた。
「当分はこの会社に関わるな。2人とも、家族のもとで幸せに暮らせ。」
「そ、そんなことできるわけねえだろ!!」
算介の言葉に、荒井は舌打ちをして頭を掻き毟る。
「それなら!!会社の奴らにばれずに、お前らだけで動け。じゃあな!!」
荒井はそう言い残すと、足早に会社の中へと戻って行った。
「そんな・・・退職って・・・・」
天馬と算介は言葉も出ず、ただ、その場に立ち尽くしていることしかできなかった。