ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Episode 1  殺し合う『ふたり』 ( No.4 )
日時: 2010/06/29 15:57
名前: 禰音 鏡幻 ◆kaIJiHXrg2 (ID: cYSZrqDn)

夏の夜は、生ぬるい風が心地良い。
今にも刃物を使って襲ってこようと言う者が居たとしても、
気持ちよく感じる。

「ったくよォ、今の時代ビルの屋上で生きるか死ぬかのデスマッチってセンスはどうかしてるぜ、黒鳶ィッ!」

俺を相手取っている女は、刺身包丁を構え、
こう告げた。

「そうかもね!死ぬのは君!決定!」

単語でしか帰ってこない、余程の興奮状態にあるらしい、
会話が成立していないような気がする。
この女は、今居る屋上に来るまで俺を追い回し、
途中の30フロア全てを火の海に変え、
警察すらここで起きている戦闘を止められずに居る。
この今居るビルの屋上は、パイプが連なり足場が悪い。
相手の小さな足にはパイプの隙間に入るのでいいかもしれないが、
俺の場合、パイプの隙間に躓く。
よって、速く勝負をつけるべきだ!
相手が…動いた!
俺もパイプの上を飛び回るかのように間合いを詰め、
持っているバットを振り下ろす!
……バットは隙がデカイ、当たらないな。

「逃げる以外に脳が無いのかッ!」

「そうかな?どうだろうね?……どうだと思う?」

その会話の直後、俺の脚にロープが撒きつきビルから弾き出した!

「クソ!トラップか!黒鳶も落ちている !? 」

多分、トラップに自分も引っかかったと言う所だろう、
俺達は30階のビルから、 約45m下の地上へと落下していく!
ここで落ちれば確実に死ぬし、落されればそれまでだ、
下で張っている警察のクッションなど、
落ちていく時の衝撃で軽減できる量の衝撃を吸収した所で死んでしまうのは目に見えている、
ただの気休めでしかない!

「う゛ぁ゛あ゛ぁ゛あ゛ぁ゛あ゛ !! 」

地面が目の前まで迫ってくる!
飛び降り自殺は地面に当たる前の落ちている途中で死んでしまうと言うが、
どうやら俺は途中で死ぬタイプでは無いらしい。

「クッソ!何で途中で死なねーんだよ、落ちた時がイテーじゃねえか」

そこで、俺の人生は終るんだ。
短い、ワケのわからない、存在意義の無い人生が……。