ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Last target is ———you? ( No.14 )
- 日時: 2010/06/30 21:54
- 名前: 白柊 (ID: COldU63y)
- 参照: http://吹奏楽部所属です♪ お話できる方は気軽にどうぞ^^
∮#04 incomprehensible child∮
化け物の動きは思ったよりも愚鈍で、私は直ぐにルファの前に立ちはだかった。
しかし化け物は相当気がたっているらしく、すぐに鈍器を振り上げる。
急いでるファを逃がす。
いや、そんな場合じゃないのかもしれない。
打撲。出血。多量。死。
恐ろしいサイクルが自分の中に浮かび上がる。
それだけは、なってはいけない。
鈍器が、振り下ろされる———
自分に向かって——————
「う……うわぁぁぁぁぁぁっ!!」
思わず叫ぶ。
いや、叫ぶというより悲鳴だった。
死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。
殺され、たくない。
ガァァァァァァァンッッ……!!!
鈍器は派手な音を立て。
私に当たった。
しかし、突如襲ったのは、痛みではなかった。
「……?」
確かに当たった、衝撃もあった。
のに、痛くない。
打撃の痛みを感じていない。
どうして——————?
化け物も何故痛みを感じていないのか、と驚いている。
咄嗟の反撃のチャンス。
では無い。今の私には鈍器の痛みを感じない自分に恐ろしさを感じていたからだ。
しかし、それを考える暇も無くなっていた。
「う……ぐぁぁぁっ」
私に突如襲ったのは。
精神に入り込んでくる〝何か〟だった。
勝手に脳内を弄られているかのように、映像が浮かんでくる。
1人の、子供がいた。
子供が戦場のど真ん中に居た。
兵士が子供を槍で突き刺した。
子供は一瞬にして血まみれになって倒れた。
恐ろしい——————
私は映像を見ている中で思ってしまう。
何故、鈍器に当たって痛みを感じなかったのか。
何故、今私はこんな恐ろしい映像を見てるのか。
そんな事を何一つ疑問に思わない程。
映像に見入っていている。
突如、視点が倒れた子供の顔に移る。
死んでいる筈なのに涙を溢していた。
唇も顔色も真っ青で、痩せ細っていてそのままでも死んでいそうな子供だと思う。
頬に少し赤黒い血が着いている。
目には、涙を——————
子供の瞳には希望が映っていないように見える。
もう諦めや絶望しかない。
この世の全てを理解してしまったかの様な瞳。
この世の、全てを———?
ふと子供の唇が動いた。
〝死にたい〟と。
「うぐっ……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
叫ぶ。
心の奥底から、叫んでいる。
怖い、と。恐ろしい、と。
どうして死にたいんだ。
何で生きたいと思わないんだ。
何故殺される事に哀しみが無いんだ。
……子供の瞳が、子供の顔が。
恐ろしくて恐ろしくて仕方がない。
恐ろしいのは瞳に希望が映ってないからじゃない。
恐ろしいのは顔がもう痩せ細っているからじゃない。
死にたい、と。
もう生きたくはない、と。
殺されても良い、と。
子供が心の底から語っていたからだ。
「……グルッ……ウグゴガァァァァァ!!!」
油断、していた。
化け物は私が叫んでいるのを見て鈍器をまたも振り下ろした。
何となく分かる。
今度は衝撃を受ける。
間違いなく、当たれば死ぬ。
嫌だと、言っている筈なのに。
あの少年の顔を思い出すと何故かもう良いやとなる。
もう、死んでしまっても良いかな。
もう、生きていなくても良いかな。
ふと、そう思ってしまった。
……何が良いんだ。
ふと、理性が取り戻されたかのように私は気付く。
死んで、どうする。
生きたくない、と願ってどうする。
其処に、何がある。
嫌だ。
死にたくなんかない。
死ぬものか。
生きてやる。
ふと、自分に向かってまたも降ろされる鈍器を私は見つつ。
何か不思議な心が沸いてきたのが、分かった。