ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 黒兎 -Jet Black Rabbit - ( No.9 )
- 日時: 2010/07/04 16:00
- 名前: 獏 ◆jOx0pAVPUA (ID: tVOKPYTM)
第二夜 「金髪男」
「はぁ、今日のはまぁまぁ素早い奴だったな」
少年は刀を振り、血を落とす。
そして手にしていた鞘に刀をしまった。
男は即死だったのか今はピクリとも動かない。
「生きてますかー? 死んでますよねー俺が殺したんだし」
少年は倒れている男の右腕に目を向けた。
男の右腕にあるのは龍の刺青。
少年はそれを見て大きな溜息を落とした。
「ハズレだ。俺の探してる奴じゃなかったわ」
残念そうに肩を落とし、再び溜息を落とす。
「じゃ、そろそろ帰ろー「待て」
「ん?」
後頭部に突きつけられた何か。
冷たく硬い、そして少量の火薬の臭い。
「ちょっとお兄さん。人の頭になんつーもん突きつけるんスか」
少年はそっと手を頭の上に上げる。
「今の状況からして当たり前の行動だと思うが?」
いや、だって今アンタはか弱そうな少年に銃を突きつけているわけで、それのどこが普通なんだよ。
少年はそう心の中で悪態つく。
「大人しく我々について来て貰おうか」
「何もしてないのになんでついて行かなきゃならないんスか?」
少年は迷惑そうに目を細めた。
「そういうことは、自分の格好を見てから言えよ」
そう言われた少年は自分の服を見つめた。
返り血で真っ赤になった自分の服。
……これは隠せないか。少年はそう考え仕方なく男の後ろについて行った。
「って、俺がそんな素直な奴に見えたかぁぁあぁ!!」
隙ありと言わんばかりに少年は男の背後に攻撃を仕掛ける。
しかしそれは避けられてしまった。
「ありゃ、避けた」
少年は少し驚いたように目を見開いた。
「大人しくはついて来ねぇみたいだな」
「そりゃもちろん。こんな所で捕まってらんないからね」
何故が長い沈黙が続く。
「は? お前何言ってんの?」
最初に口を開いたのは男だった。
そして金色の髪を手でグシャグシャとして溜息を落とした。
「俺らは警察でも何でもねぇよ。お前を捕まえるつもりはねぇ。むしろ保護しに来た」
「保護? んだよそれ」
少年は警戒心を解かず、刀を構えた体勢で金髪男の話に耳を傾けた。
話によればこの男は、
能力者専門の殺し屋「黒兎」の社員らしく
最近暴れまくっていたこの少年を仲間にすべく
少年が能力者殺しを行っている現場に来たらしい。
「ふーん。で、何? そこに行けば俺の“探し物”の手掛かりが少しは掴めるのか?」
「こうして一匹狼してるよりは掴めるんじゃね?」
少年はまだ警戒しているのか、刀を持ったまま考える。
「あのさ、俺、結構忙しかったりするんだよな。早くしてくれよ、俺も眠いから」
男はどうやらあまり気は長くないようだ。
「でもさ、俺は親から人をそう簡単に信じるなって教え込まれてんの」
「お前の親どういう教育してんだよ」
男はまた溜息を落とし少年に寄る。
トンッ
「なっ」
男は少年の首の後ろを手刀で突く。
「ごめん。ちょっと寝ててな」
急所を突かれた為、少年の体は支えを失い倒れる。
男はそれを支えた。
「て、め……覚え、てろよ……」
「はいはい」
男は意識のない少年を肩で抱え、近くに止めてあった黒い車に乗り込んだ。