ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: SBS ——空の王者—— ( No.43 )
- 日時: 2010/07/11 13:40
- 名前: 空 ◆EcQhESR1RM (ID: BwWmaw9W)
柔は、スピードを落とさずソラニンの後ろにつく。戦闘機同士で後ろにつくというのは、逃げると撃つが固定された状態。柔はこの状態を待っていた。
たった十六歳という若さでSBS最終試験に残ったのは、理由があった。
SBSというのは、誰しもが頂点をこの手に掴もうと足掻き、もがく場所。そして、あまりの高みの為、優勝者に一生栄光とした称えられる。
たった一回で最終試験まで通れるような代物ではない。では、なぜ金剛崎 柔という少年は登り詰める事が出来たのか……。
「ソラニンの連射をかわすことが出来た……」
ベルトが呟く。桜子司令官の額に、冷や汗が流れた。
「やるじゃないか、金剛崎。現役ソラニンからかわすなんてよ」
輝きを放った目で、画面を見つめる。
ベルトは、唾を飲み込み喉元を鳴らした。
「……あの子、たった十六歳でSBS最終試験に残ったのよね?」
「そうです」
ベルトが答える。
桜子司令官が、黒鳥とベルトの両方に目を移す。
「タダものじゃないわね。彼は大会なんて一回も出ていないという情報だけど?」
「そうだ。その結果があれだ」
「つまり、裏があるのね」
桜子司令官は、黒鳥の後ろ姿に射ぬくような視線を送る。その熱く焼けるような視線を感じながら、黒鳥の口が開いた。
「金剛崎は、自分の戦闘機を改良している。それは、もしかしたら開発部よりも戦闘機に詳しいかもしれない。金剛崎は、自分のマシンガンを最大限に連射できるようにしている。その時間、約五分」
「五分ですって!? 嘘……それが、最終試験に残る事が出来た最大の武器……」
ベルトが、鋭い目つきで画面を見ながら黒鳥の後を継ぐ。
「柔くんは、約五分も連射できるマシンガンで必ず相手のエンジンを破壊し、どんなに逃げ回っても必ず機体を海に沈ませる……!」
柔は、隅の方にあるスイッチを押す。すると、弾を入れる部分が多くなり円形上にある弾入れ部分にもう一つ輪が出来あがる。つまり、二重丸のようになると、弾を入れていく。
柔の舌が下唇をチロリと、まるで蛇のように舐める。標的は目の前に居るソラニン。柔の鋭い目がエンジン部分を射す。ギラリと光る目、それは草食動物を狙う肉食動物のような——……。
「イッツ・ショータイム……」
低く唸るような声で呟いた。