ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 血塗られた顔は、月明かりの元に。 ( No.1 )
日時: 2010/07/03 21:08
名前: 紫音(ミサカ) (ID: VJEgN8CS)


       プロローグ

 私の顔は、血で染まる。
 一体、誰の血なのだろか。
 真っ赤に血塗られた顔で、闇夜を見つめる……。
 銀色に輝く月は、何を思う——?

Re: 血塗られた顔は、月明かりの元に。 ( No.2 )
日時: 2010/07/03 21:27
名前: 紫音(ミサカ) (ID: VJEgN8CS)

 幾千もの星が散りばめられる闇夜には、今にも消えそうな月が浮かぶ。深夜の風が、私の頬を撫で悲しそうに去ってゆく。何故、こんなにも虚しくなるのだろう。今の私は、快感で満たされているというのに。
 右手に握っているナイフは、そんな私を嘲るように、赤黒くなった表面で顔を映す。この、醜い顔を……。
 ピエロの仮面の如く、ぱっくりと割れた笑みを浮かべていることに気づかされた。この仮面を剥ぎ取れば、本当の表情があるかどうかも分からない。

Re: 血塗られた顔は、月明かりの元に。 ( No.3 )
日時: 2010/07/04 12:20
名前: 紫音(ミサカ) (ID: VJEgN8CS)

           一章 漆黒の闇
  

              1

 燦燦と降り注ぐ、陽光が目に入って眩しい。久々に浴びる光は、気持ちが良いとは思えなかった。部屋のカーテンを閉め、暗がりの中に体を落ち着かせる。

「たまには、外に出たらぁ?」

 私の行動を見ているはずか無いのに、見ているかのような発言がドア越しに女の声がした。まぁ、いつもこう言っているんだけど。
 此処に来たということは、用事があるということなので、ドアへと歩み寄り少しだけ隙間を開けてやった。

「朝ごはん。食べなよン」
 
 わずかな光と共に、差し出してきたのはジャムトーストと、ミルク。甘いジャムの香りが鼻孔を掠め、空いているお腹を擽る。
 ぎこちなく受け取ると、女は微かに笑いドアをご丁寧に閉めた。ガション、と重たい音が響く。一番最初の言動と矛盾するが、鍵を閉めたのだろう。私が、逃げないように。