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Re: 理想郷 ( No.3 )
日時: 2010/07/04 21:36
名前: 金平糖  ◆dv3C2P69LE (ID: TQ0p.V5X)

序章

‘ヘル’では今、台風が猛威を振るっている。それと同時に雷も鬼神の如く暴れている。
震度もマグニチュードも過去最高の地震も起きている火山も噴火を始めている……

しかし私はそんな事は一切気にならなかった。その理由は簡単で私は‘ヘブン’にいるから。
ただそれだけの事。私は手元にあった本にまた目を落とした。


「うっ……ひっ……ひぃ……ぐすっ、ぐすっ……」

建造物は全て倒れ、地面は地割れを起こしたり盛り上がったりしている……
そのまさに地獄絵図の中、一人の少年はただ泣いていた。
まだ小学校一年生にもなっていない、まだ親に甘えていて良い時期の少年はただ一人、寒さに震えながら地面に座り込み、涙と嗚咽を出していた。


2033年、政治家や資産家、お金持ちや天才、有能な人物、飛びぬけた能力を持つ者達は……‘ヘル’を捨てた。

その理由は、地球の大きな環境の変化によってだった。2025年から地球は頻繁に自然災害が起こるようになった。
2年後の2027年にはほぼ毎日、台風、雷、地震、火山噴火が起きるのが当たり前となった。
2028年、気象庁は2049年には地球はもう住めないような場所になると予測をした。

人類はすぐに対策を立てた。
それは今まで住んでいた場所を‘ヘル(地獄)’と名づけ、そして‘ヘル’を捨て、理想郷に移り住むと言う信じがたい物だった。

学者達は集まり、すぐに安全な理想郷の製作に取り掛かった。
そしてたった5年で人類は理想郷を三つ、実現させた。

一つはアメリカ作成、移動型理想郷ラン・アウェイ、もう一つは日本作成、壁で守られた要塞型理想郷ジパング、最後に世界各国共同開発、謎が多いが一番安全かつ昔のヘルに近い理想郷……


                      ‘ヘブン(天国)’