ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 理想郷 ( No.57 )
- 日時: 2010/07/22 20:35
- 名前: 金平糖 ◆dv3C2P69LE (ID: TQ0p.V5X)
とある駐屯場にて。
そこでジュンイチと、整備士の服を着た白人の男が会話をしていた。
「今日ハMemory of the battlefieldト共同作戦ダト思ウト楽シミデムネムネシテクルヨ!」
「本当だよなぁ……まさか俺もギリギリ10代のうちにナマでメモリーオブザバトルフィールドに会えるとは……」
男はるんるんと歌いながら戦車の整備をし、ジュンイチ戦車の車体に座りボーッと空を見つめた。
Memory of the battlefield……直訳で記憶の中の戦場、つまり戦場の記憶。
それは元軍人を中心とした反政府組織で彼等は『カラベナ』と呼ばれる場所を本拠地にしており、主な活動としては他の反政府組織に対して武器給与や軍事訓練を行っていると言う物である。
強い力と数々のそれの活動はまさに『正義』で、Memory of the battlefieldはヘルの人間達の憧れであり、正義の象徴でもあった。
そして、そんな組織との共同作戦はかなり激しい戦いになる事が予想できた。
死んだらどーしよ……考えても無駄か、
ジュンイチは戦車の上に寝転がり、小さく笑った。
他の整備士達は、整備士でもないのに何故か居るジュンイチを邪魔そうな目で見た。
やけにハイテンションな男は「ジュンイチハ何デ発音ガナッテナイノカナ!ホラ、俺ノ真似真似!Memory of the battlefield!」と陽気にジュンイチに言うが、
それに対してジュンイチは「俺日本人だから発音無理だっつーの」とふにゃふにゃとした間抜けな声で呟いた。
「デモデモ、ライエル大佐日本語上手イヨ」
自分の分の仕事が終わったらしく、男は整備の道具を箱に片付け始めた。
「大佐は別だっつー……うわっ、話をすれば大佐来た!」
ジュンイチは急いで車体から降りて敬礼をした。
男も片付けの手を一旦止めて敬礼をした。
ライエルは二人を見た後、英語で男に話しかけた。
『ジョン・スミス、戦車の整備は終わったのか?』
『とっくに完了してるぜ!全部完璧だぜぇ!』
待ってましたと言わんばかりにジョンと呼ばれた男は親指を立ててOKサインを出した。
『そうか……なら良い』
そう言ってライエルが去った後、ジュンイチは「お前の英語ってやっぱ汚いな」と呟いた。
「ショーガナイダロ!黒人町育チノ貧乏白人ノ英語ニ綺麗ヲ求メチャ駄……」
ジョンがそう言い終わる前に、
「あー!スゲエッ!スゲエぞ!メモリーオブザバトルフィールドの戦車だ!予定より一時間早くやって来やがった!」
「オォッ!皆ノ憧レダヨネェ!」
ジュンイチは走っている戦車を指差しながらきゃぁきゃぁと女子高生の様にはしゃいだ。
ジョンも片付けをほっぽり出し、一緒にはしゃぎ始めた。
「うおぉっ!あれアンジー・ベイカー大佐じゃん!やべぇよやべぇよ!ナマでメモリーオブザバトルフィールドに会える所かアンジー・ベイカーも見れるなんて……!」
「俺達ツイテルネ!」
♪
反政府組織Memory of the battlefieldの大佐であるアンジー・ベイカーはきゃぁきゃぁと声のする方を見つめ、鬱陶しそうな顔を「騒がしい子達が居るな」と英語で呟いた。
「まだ反政府ゲリラに入ったばかりの幼稚な奴等です、これから訓練と実戦を積み重ねて子供とは呼ばせないようにします」
同じく反政府組織の大佐であるライエルはいつもの厳しい表情を崩さずに言う。
アンジーはそれが気に食わなかったのか不機嫌そうな顔をし、声だけわざとらしく笑いながら喋った。
「是非ともそうしてくれ、騒がしいのは赤子だけで充分。早速だが今回の作戦の再確認を行おう」
ライエルは会議室に行くまで待てないのか心配性、と思いながら、心の中でそんな事を思っているとは思えぬ冷静な喋り方で「随分と慎重だね」とアンジーに言った。
「慎重なのは当たり前、相手は政府軍だ」
ライエルがそんな事を思っているのにアンジーが気付く筈も無く、歩きながら人差し指を立てて言った。
迷い無い口調と喋り方でライエルは語り始めた。
「今回の作戦は政府側の身勝手な行動を問い質す為の作戦だ。
ヘルには理想郷に住む事が出来ず毎日天災に怯える人間が居る中、ここらの地域の人間を追い出し、遊楽都市を設計する計画をしている。それは許される事ではない」
アンジーは納得した顔をし「そして午後二時に大橋総理がここで遊楽都市設計宣言の会見を開く、そこを襲撃……」と少し大げさなジャスチャーをしながら言った。
「そう言う事になる。作戦についてはこれから各隊の隊長を交えて説明をする」
「それで宜しい」
二人は既に各隊隊長が待っている会議室に入って行った。
- Re: 理想郷 ( No.58 )
- 日時: 2010/07/24 10:58
- 名前: 金平糖 ◆dv3C2P69LE (ID: TQ0p.V5X)
今日、私(わたくし)の通っている学校に政府が管理するヘル日本エリアの中で最もレベルの高い学園、紫陽花学園から転校生がやって参りました。
私の通っている学校は中学校でございます。
その中学校は良い中学校と悪い中学校に分けるとしたら、悪い中学校に入ります。
生徒全てが悪い人間で、負け犬や蛆虫、ゴミグズ以下達でございます。
建前上は中学校ですが授業らしい授業は数えられる程度しか受けておりません、この学校の生徒は皆反政府運動に明け暮れているのでございます。
だからこんな学校に突然の転校生は私を驚かせました、
さらにその転校生を見て私はもっと驚いてしまいました。
紫陽花学園の制服を着た転校生は、とても綺麗で涼しげな顔立ちをされた男の方でございます。
癖毛な茶色の髪と、少しだけ日本人離れした目鼻立ちをされましたが、左目には眼帯、左足は木の棒を包帯で固定をされおり、両腕には一本ずつ松葉杖が握られております。
一体何があったのでございましょうか、私が彼の綺麗な顔を無礼にもしげしげと見つめていると、するとどうでしょうか目が合ってしまったのでございます。
しかし彼はどうでも良さそうな表情ですぐ私から目を逸らし、自己紹介を始めました。
「始めまして加藤レンリです、宜しくお願いします」
加藤さんの自己紹介はとても簡単で寂しい物でした。
「それだけか?」
「はい」
先生はとくに何とも思っておらず、適当に開いている席を加藤さんの席にしました。
その開いている席は窓際の一番後ろの席であり、私の後ろの席でもありました。
加藤さんがその席に座った後、私は何故か丸まっていた背筋を伸ばし始めたのでございます。
どうしてでしょうか顔がとても熱いです。
胸がどきどきとして息が上手く出来なくなりました。
今自分がどのような表情をしているのか分からず、恥ずかしくて俯いてしまいました。
私は一体どうしてしまったのでしょう。こんな事になるのは生まれて初めてでございます。
これは一体なんでございましょうか、私は早く家に帰りたくなりました。
これは一体何でございましょうか……