ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- 第一話 ( No.7 )
- 日時: 2010/08/05 14:30
- 名前: 金平糖 ◆dv3C2P69LE (ID: FwQAM/tA)
第一話 失楽園。
今日は珍しく穏やかな何も無い、良い天気な日だ。
本当に、10年後の2049年には地球は住めない様な場所になってしまうのが嘘に思えた。
私は大きく綺麗な青い空と、高くそびえ立つジパングを見上げた。ジパングを見た途端に私は少しだけ苛立ちを感じて舌打ちをした。
なんで、私達は住めないのよ……
最初の理想郷三つが出来て半年、世界ではどんどん新しい理想郷が作られ私達の様な平民でも住める準備は整っていて良いはずなのに……
日本だけでも今ある理想郷はジパング、ワーク……それと完成間近の平安京と建設中の龍宮城!
ジパングは東京スカイツリーや富士山よりもずっと大きく高く広いはずなのに、住む事が出来るのはごく一部の者だけ……
平民に関しては政府はとくに何も言わず、ただ耐久性の強い、ジパングの壁と『似た』強化素材を与えてくれるだけだった。
もちろん似てる素材なので、何回も天災に見舞われる度に積み木の様に壊れていく。
何で余裕が有るのに助けてくれないのよ!
そう思い、苛々しながら道を歩いていると
「マツワ!学校サボって何をしてるの?」
「ひっ!?」
後ろからバイクのエンジン音と明るい声が聞こえた。
この声にビックリして、心臓をバクバクさせながらも振り向くと、そこにはクラスメイトであるイチイが黒色のライダースーツを着て、これ見よがしに自慢のナイスボディを見せつけながら、レーサーレプリカのカッコイイバイクに乗ってこちらに手を振っていた。
一番会いたくない人に会っちゃったよ……そう思いながら渋々「アンタこそ学校行かずにバイク乗るなよ……」と呟いた。
『とくにそれと言った理由は無いけど、しいて言うなら良い天気だったから散歩してたんだー!』なんて絶対なにか言われる。
「イチイ、アンタそんなんで大丈夫なの?」
「あらあら、マツワも人の事を言えた立場じゃないでしょ?それにこんな良い天気の日は風を感じてなきゃ時間が勿体無いわ!」
イチイは整った綺麗な顔の表情をコロコロと変えながら、愛車のエンジンをしっかり切って降りた。
イチイ……と私の通っている学校である紫陽花学園は日本政府の管理する、ヘル日本エリアの中で最もレベルの高い学園で、
そこでしっかり勉強をしてを一定基準値(めちゃくちゃ高い)を大きく超えていれば、卒業式の日に理想郷在住権(家族も含め)が与えられる様になっている。
- 第一話 ( No.8 )
- 日時: 2010/07/05 18:37
- 名前: 金平糖 ◆dv3C2P69LE (ID: TQ0p.V5X)
私の学力は平均的で、理想郷に行く事は絶対に無理な状態だった。ましてや高校二年生の途中から成績を上げても在住権が貰える確立は低い。
貰う為には全てのテストで100点を取るしかないだろう。
それに普通の学校の人は自分よりもっと理想郷に行くのは難しく、平凡なサラリーマンなんて希望を捨てた方が良い状態だった。
だから、最近は『平民を捨てるな!理想郷に住ませろ』と言う反政府運動が起きている。
実は私もその反政府運動を行っている人間の一人だった。
むしろ、ヘルに居て反政府運動を行わないのは逆に珍しい事だった。
そしてそこ珍しい事をしている人間は、今私の目の前に居るイチイだった。
「私は優秀な弟が居るから、その弟が卒業の日に在住権貰ってくれるから良いの!それにイザという時は私は玉の輿出来るから」
イチイは長い艶やかな黒髪を掻き分けると、無駄にデカく形も良いEカップの胸が大きくぽよよんっと揺れた。
私は自分のお情け程度しかくっ付いていない胸を見ながらしょんぼりとした。
自分もイチイ位美人でスタイルも良かったら世の中良い事だらけなんだろなー……
平凡で可も無く不可も無く、優秀な家族も居ない自分はヘルでちみちみと反政府運動をするしかないのだ。
「ねぇマツワ!今日は気分が良いから、特別に私のバイクに乗せてあげる!良い所に連れて行ってあげるわ!」
「え、ちょ……まっ」
言いかける前に無理矢理私はヘルメットを被せられ、無理矢理バイクの、イチイの後ろに乗せられた。
「しっかり掴っててね!あんまり五月蠅いと落とすから」
ニッコリ笑いながらイチイが言うと、バイクが唸る様にエンジン音を出して……
「嫌あああああああぁぁぁぁぁぁぁあぁあああああああああああ!!」
マツワの叫び声が木霊した。