ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 理想郷 参照600達成記念、第二回オリキャラ募集中 ( No.96 )
- 日時: 2010/08/08 18:23
- 名前: 金平糖 ◆dv3C2P69LE (ID: FwQAM/tA)
マツワが向かったのは紫陽花学園の学生寮だった。
学生寮は家と学校が遠い生徒の為に作られた物だが、建物の設計に当たって膨大なる資金がかけられており、安全面に関しては完璧の建物なので、家がそう遠くない生徒も学生寮を使用している事が多い。
マツワは学生寮に着くなり寮長室に飛び込み、
「ねぇ、高等部二年の伊藤スズさんってどこの部屋に居るの?」
さっきまでお茶を飲んでいた寮長は、突然飛び込んできたマツワにビックリしながら答える。
「そこまでは私も……」
「なら今すぐ調べて!」
マツワの迫力に寮長はびっくりしながら、すぐにパソコンで部屋を調べ始める。
「わ、分かりました、伊等さんの部屋は512号室です……」
「ありがとうございました!」
お礼を言いながらマツワは寮長室を飛び出して512号室へ向かう。
エレベーターを待つのも面倒で、マツワは階段を三段飛ばしで駆けて行く。
三階まで行った辺りで足が痛くなったが、マツワはそれを気にせず五階へ向かって走る。
しかし、途中の階段で……
ガクンッ、
マツワは右足を踏み外し、後ろに倒れそうになる。
すぐにたまたま近くを歩いていたユウイチが倒れないよう手を掴もうとするが、すぐにマツワは右足を後ろに踏み込み体勢を立て直し、転倒しそうになったのを気にせずまた走り出す。
「元気だなぁー……」
ユウイチはそう呟いてまたのんびりと歩き出した。
やっと五階に着いたマツワは、息を切らせながら512号室のドアを乱暴に叩く。
中から「誰?」と声がした後、ドアが開かれる。
すぐにマツワは地面に頭をつけながら土下座をして、叫んだ。
「お願いします伊藤さん!私に貴方の頭脳を貸して下さい!」
伊藤は何が何だか分からず、口をあんぐりと開けながらマツワを見つめる。
「お願い!私じゃ何すれば良いか分からないの!」
「とっと、とにかく部屋に入って!土下座も止めて!」
混乱しながらも伊藤はマツワを部屋に入れ、誰も見ていないのを確認した後、部屋のドアを閉める。
「何なのよ突然!もしも孝政と麻子達に見られてたらまた私ヤンキーって勘違いされちゃう!」
伊藤はぷんぷんと怒りながら、マツワを椅子に座らせてお茶を入れる。
伊藤スズは高等部二年学年主席の才女で、マツワは彼女の『頭脳』を借りにやって来た。
「伊原さん、頭脳を貸せってどういう事?」
緑茶と茶菓子をマツワの前に置いた後、伊藤も椅子に座ってお茶を啜り始める。
「私、今の状態が許せないの」
「そりゃーね」
マツワはお茶を飲み干した。
舌を火傷するが、そんなのお構い無しに、
「だから、反政府組織……新しい復楽園会を作る。だけど私は馬鹿で運動も出来ないから……お願い協力して!」
伊藤は手に持っていたお茶をテーブルに置き、落ち着き払った様子で、
「復楽園会の名前を使うって言うのは良いアイデアね、元復楽園会の人なら殆どが入ると思うわ。
で、私は具体的に何を協力すれば良いの?」
「私がそこまで考えてる訳ない……でも反政府組織を作り、勢力を大きくし、出来るだけ行動力を高くするには、伊藤さん、貴方の協力が必要なの」
伊藤はマツワを見つめる。マツワも伊藤を見つめ返す。
「私ね、“彼”がこの学園を去る前までは二番だったの……その二番の私で良ければ、協力させて貰うわ」
伊藤は立ち上がり、マツワに手を差し出す。
握手をしようとしているのに気付いたマツワは、急いで立ち上がり、二人は握手をする。
「有難う……伊藤さん」
「どういたしまして」
ここでやっと落ち着いたマツワは、自分がパンツを履いていなかった事に気付き、急に恥ずかしくなり床に座り込んだ。