ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

ちょっと急展開かも知れませんww ( No.100 )
日時: 2011/01/25 20:19
名前: スサノオ (ID: pIrKYmvX)


影はゆっくりと、しかし確実に這いよってきていた。


影がついに侵食し、如実に現れ始めたのは謎の男襲撃から2日後のことだった……。




怜は首をかしげながら大通りにある坂を下っていた。

今日の優はおかしかった。
いつもなら部屋に入るとこちらに笑顔を向け、怪我人の癖にお茶を入れようとするのに。
今日は入ってきたことも分からないというような様子で窓の外を見つめるだけだった。
しゃべりかけても淡白な返事しか会えって来なくて俺は激しく狼狽した。
それに、今日の優は……笑わなかった。

それが俺にとっては一番ショックなことだった。
何を話しても窓の外を見つめながら単調な返事を返すだけにとどまった優との会話の気まずさに耐え切れなくて俺は短く帰ると言う旨を伝えるといつもの如く目隠しをされた状態で運ばれレジスタンスを後にした。


(おかしい)
そう思うのも無理は無かった。

だが帰る直前にエリックに聞いてみたのだが、起きてから今までおかしな様子は無かったと言う。

恋煩いでもおかしたんじゃねーのと言う台詞にガッハッハというおまけサウンド付きに何故かイラッときた俺は慌てて謝ろうとするエリックに背を向け寝床としている我が家へ帰るために帰路へ付いた。




話題に上っているその人、優は今ようやく窓の外に広がる景色から目を離したところだった。
床に向けられる視線に含まれている感情……。

それは”怒り”



さっきは感情を抑制するのに必死だった。
やってきた少年を見た瞬間に湧き上がった怒りを抑えることが出来てよかったと思う。

今はまだ勝てない。十分な用意をしなければ。

気持ちが揺れない訳じゃなかった。
でも……。

(お父さん……)

気持ちは固まっていた。
後悔はするだろう。だがやらないわけには行かない。

自分の気持ちを今一度再確認すると優はベッドから抜け出しそしてレジスタンスから逃げ出した。

警備厳重なはずのレジスタンスも今の優にとっては穴だらけだった。



行くべき場所は決まっていた。

荷物を取りに行きたかったが出来るだけ痕跡を残したくない優はそのままそこへ向かうことにした。





真っ赤な月が瞬く不気味な夜を優の駆け抜ける音が響いた。