ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: abnormal children 参照がありえない数に… ( No.102 )
- 日時: 2011/02/07 17:20
- 名前: スサノオ (ID: pIrKYmvX)
- 参照: 1話一部変更しました^^;
優は怜の捜索場所とは全く違う場所に居た。
今、怜が立っているのは元に優がいた町にはほど遠いとある寂れた研究所の前に居た。
ここは今の優にとって唯一の身寄りがある場所だった。
誰にも知られることはない……。はずなのだ。
あの怜でさえ今はこの場所は分からないだろう。
今はもう……誰からも忘れ去られた場所だから……。
だが優は思い出した。この場所で起こったことの全てを。
なぜ忘れてしまったのだろう。
全てのものに抗うと決めたこの場所を。
私の誓った人生を。
指紋認証に手をかざし入り口のドアを開ける。
(そういえば指紋の有効期限がもう少しで切れるはず。更新しておかないと)
研究所内部は当然のように真っ暗で、優は入り口にあった懐中電灯の心許ない光を頼りに研究所内部を進んでいた。
優は目的の部屋の前に入る。
そこは机に数台のパソコン、そしてコードが乱雑に散らかったいかにも研究のことしか頭に無い博士の部屋、といったような部屋だった。
(認証が付いてたからパソコンも付くと思うけど……)
幸いなことにパソコンは付いた。
デスクトップにある認証許可者のアイコンをクリックするとパスワードを求められた。
優は知っていたここに住んでいた者も癖を。あの人のパスワードはいつも決まっていた。
それは……私の、誕生日。
入力すると今現在、解除が許可されている者のリストが表示された。
一つ一つ確認して行く優の手が目的である自分の名前を見つける前に固まる。
佐野 怜 と表示された欄を見つめる目には決意と戸惑いどちらが浮かんだのか。
やがて優はその欄をクリックすると警告ウィンドウが現れた。
優は震える手でカーソルを下に進め、躊躇いがちに指を置いた……。
部屋を出た優は長い廊下を渡り、とある部屋に入った。
その部屋は通常食事に使う部屋。
そこには唖然とする光景があった。
それは普通なら広がっているであろう光景。
だがここには相応しくない光景。
そう。無人のこの施設に広がっているはずが無いのだ。
そこには未だ湯気を出すスープとオムライス。
通常はありえない光景。だってこの場所は無人のはずなのだから。
しかもこのメニューは……。
あの人が好きだったメニュー。
しかしあの人たちはもういない。この世には。
背後で何かが倒れる物音。
肩を震わせた優が振り向いた先には、2人の男女。
優は目をぱちくりとさせると2人の男女は満面の笑みを浮かべた。そして女の方が優に駆け寄り抱きついた。
その口から漏れた言葉。
「やっと。やっと会えた。私の可愛い娘に……」
その言葉は優にとって歓喜とともに苦渋をはらむものだった。