ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: abnomal children(異常な子供たち) ( No.15 )
- 日時: 2011/03/02 00:31
- 名前: スサノオ (ID: chZuMjzt)
無数のざわめきが下から湧き上がってきても、ここは比較的静かだった。
「はあ……。」
優は、自販機で買ったココアを片手にベンチに腰掛けた。
この日ノ和学園にある休憩室は吹き抜けになっていて、開放感がある。
昼食時や昼間は生徒がやってきて、にぎやかなのだが、放課後の今はこの時間に来る生徒はいないし、
飲み物を求める運動部はグラウンドや体育館に近い場所に行く。
そのため、この場所は比較的静かだ。
近くに、下級生の一団(おそらく文化部の連中だろう)が集まって話していたが、
その声もこちらに届くころには意味の無い音の塊になってしまう。
「ふう…。」
また、ため息。
なぜこんなにため息をついているのか。
事の始まりは、2時間目の化学の授業だった。
いきなり、先生が課題を出したのだ。それは…
『天性型能力者による能力体結晶実験の平均創結晶についての、自らの見解をレポート10枚以上にまとめろ』
という物だった。いわば高校生が大学教授の超難問を解くようなものだ。
こんな物が、高校生に出来るわけが無い。
怜などは端から諦めて遊びに行ってしまった。どうしても無視できない優は1人残って調べていた。
が、それらしき専門書を開いて見ても訳がわからず、それを理解するために、また別の専門書を開く。
そんなただ時間が流れるだけの行動にしかすぎなかった。
しばし落ち着いて一口、ココアを飲もうとしたそのとき
「わっ!!」いきなり肩を叩かれた。勢いよく手に持っていたココアが飛び散る。
「きゃっ!」
服に付着したココアは真っ白なワンピースを黒く汚させた。
「うわっ!?コーヒー飲んでたの!?」
コーヒーじゃなくて、ココアなんだけど…。そんなことはどっちでもいい。
「コラッ!渚!人をおどかすのも大概にしとけっていつもいってるでしょ!?」
「あー…。ごめん…。クリーニング代、払うからさ」
この子は、逢原 渚(あいばら なぎさ)
なんか、子供っぽくて純粋なのはいいんだけども…。
うん。なんかね。相手にすると…とても疲れる。
瀞と同じタイプの子だと思う。だが渚の笑顔はどこか怒らせないようなところがあり、怒りが静まる。
「はぁ〜…ま、しょうがないか。それで?なにか用?」
「いや〜たまたま物憂げに佇んでいる優を見かけたからおちょくってやろうと思いまして」
屈託の無い笑みを浮かべる。
あれだね、この子は子供っぽいんじゃなくて子供なんだよね…。
「あんたは、課題やらないの?」
「やるわけないじゃん!」
キッパリと渚は優に向けて言い切った。
「優が出来ないものが私に出来るわけないじゃんっ!」
胸を張っていう台詞じゃないけどね。
「それより……っ!?」
渚は急に走り出した。
優は瞬時に悟り、彼女の後を付いて行く。
彼女の能力は原石。
つまり、生まれたときから備わっていた物だ。
その能力は危機察知。
何か、殺意のある者が彼女に近づいた時その能力を発揮する。
そして、彼女に付いて行った先で見たものは…
怜の上に落ちてきた天使と名乗っていた少女、アリスだった。