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優の言葉と共に空白の時間が訪れる。





「記憶が……無いようです」
付き添いの男の言葉。
「……優？」
彼女は反応しなかった。
悪い冗談だと思った。
アリスが死んだってのも優の記憶がなくなったのも。
全部全部全部。
きっとその内その辺からアリスが”ドッキリ成功”とか書いてあるパネルを持って現れるんだろう。




しかしいくら待ってもアリスは現れないし優だって虚ろな目をして虚空を見つめている。

俺は優の肩を掴み思いっきり揺らしていた。
「おい！優！返事しろよ！悪い冗談よせって」
肩を揺らされた優は手を払いのけるでもなく怒る事も無くただ一言…。

「貴方は……誰……？」



世界が色を失った。
誰かの記憶から居なくなる事がこんなにも苦痛を伴う事だとは思わなかった。


そして心に灯る恐怖心。

もし……いつか…優の記憶が戻ったとして…。
自分が記憶を失う要因を思い出したら？

そして……。

それと共にアリスが死んだことを知ったら？

優の精神は持つのか？

ただでさえアリスのことを伝えるのに戦々恐々としていたのに？

この二つの要因を同時に知ったとき……優は現実を受け止められるのだろうか……？