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結局優が記憶を取り戻すことなく一週間が過ぎた。
優はまだレジスタンスの基地で治療を続けている。
公共の病院だと色々とまずいとかで。
俺は毎日このレジスタンスの基地に通い続けた。
その間に何度かレジスタンスに誘うようなことを言われたが、今はどうにもならないと思い断っていた。なぜ誘われたのかは分らないが……。
それよりも一刻も早く記憶を取り戻して欲しかった。
今の優が”琴凪　優”以外の人格を創る事を恐れたから。
しかしその想いを踏みにじるように、優はだんだんと周りと接するようになってきた。

性格はそれほど前向きでは無かったが良く笑うようになった。
あまり接してはいけないと自制する心とは裏腹に俺は沢山の話をした。

何でだろう。もっと優を笑わせてやりたいと感じるようになったのだ。
優を失いかけた一週間前のあの日から。

色んな話をした。記憶を失う以前の事。

驚いたり、笑ったり。喜んだり、怒ったり。

話をする内に色んな表情を取り戻す優。
ただ、なぜ記憶を失ったかと聞かれたときだけ俺は言葉を濁してしまう。
優も空気を察し、3回目からは聞かなくなった。

更に日は流れ、俺はだんだんと優を思い出さなくなっていった。
”琴凪　優”を。
今のままで良いと思った。


思い出して苦しむならいっそこのまま何も思い出さなくて良い……と。

だから本能的に”琴凪　優”を思い出すことは無くなっていた。
逃げたのだ。今の”優”に……。