ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: ウォーカー・ジョーンズ ( No.13 )
- 日時: 2010/10/26 08:02
- 名前: 工場長 ◆/UYeS30HBo (ID: P8fkdnbW)
- 参照: ぴょんすは 工場長に役職が あがった!(名前を変えただけ
「おーい。起きろー」
拳銃の先端部で少女の頭を軽く小突いた。つつかれた本人であるオレンジ色の寝間着の少女は、ムズムズと体を動かした後
「うん?」
瞼を半分だけ開く。曇天のような灰色の瞳が覗いた
「寒い……」
少女は一人ごちて、欠伸を一つした。そしてその寒さの原因である、先ほどまで埋まっていたはずの毛布を探すために首を振り
「……?」
自分に向いた銃口と、それを持った男を目の前に見つけた。男は思わず身構えるが
「えーと……。あなた誰ですか? あ。新しく入った寮の管理人さんですか? 少し起こしに来るの早い気がするんですが……」
まったく銃など目に入っていない様子で少女は言った後、ちらりとガラス窓の外を見る。ガラス越しには、まだ夜の明けていない暗い世界が広がっていた
「ほら、まだ外もあんなに真っ暗ですよ」
寝ぼけているのだろうか、銃口を向けられた人間とは思えないのほほんとした少女を見て、男は呆れたのか驚いたのか、もしくはその両方かで困った顔をして
「不思議な子だなぁ……」
少女に聞こえないよう、ぽつりと呟いた。
「えー。あー。……俺の名前はフラン・ウォーカーっていいます。新しく入った寮の管理人じゃないんです。朝早く来ちゃったのは謝ります。ごめんなさい」
男は自分の名前、寮の管理人ではないこと、そして朝早く来てしまったことを、窓を向いている少女に詫びた。少女はそれで納得して彼の方を向き直し
「ああそうだったんですか。お気になさらず」
少女は懇切丁寧な言葉遣いで応じて、ウォーカーと名乗る男はどうもすいませんと、もう一度謝った
「でもそれだったら」
少女の疑問そうな顔
「何の用で来たんですか?」
「えーと、それなんだけど……ここに来たのには理由があってね」
いったん言葉を切り、少し悩むそぶりを見せる
「実は、それがね? ちょっと言いづらいことなんだよ……」
ウォーカーは言い淀んで、これから少女に聞くべき言葉を言ってもいいものかと顔色をうかがうために少女を見る。ところが、少女は同意の合図と勘違いしたらしく、そんな彼を見てにっこりとほほ笑む
「あ、大丈夫です! 私も一応手伝える範囲であれば協力しますよ? これも何かの縁ですし」
ウォーカーは予想もしていなかった答えに目を丸くする。そして、この少女は実はちゃんと起きていて、その上で自分のことをからかっているのではないかと思ったりもしたが、これまでの少女の物怖じしていない様子と、自分との会話を考えて結論を出した
「わざやっても、もうちょっと話ぐらいは噛み合うだろ……」
「はい?」
「なんでもないです。えーとつまり俺が何しに来たかというと」
その言葉と同時に、少女の血色のいい柔らかな額に銃口が押し当てられた
「誘拐しに来ましたー」