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Re: 次元変更∞炎水風電 ( No.1 )
日時: 2010/09/20 19:22
名前: ソフィア ◆fwGIPea7qU (ID: nWEjYf1F)

プロローグ

 クルーク神殿にて。
 現・次元夢王(じげんむおう)であるスタチック=マルクスは、息子である次期・次元夢王——エレットリコ=マルクスに、半ば無理矢理、王の継承を行おうとしていた。
「だーかーら! 第百二代目・次元夢王の座を、貴殿に渡してやるんだってば! 有難く思えって言ってるだろ、このアホ息子が!」
「え、だって父上! 自分、まだ心の準備が……!」
王の息子、エレットリコ=マルクスは、慌てて父の無茶苦茶な要求を断ろうとしたのだが、ホモ気質のある父親の前では、どうにもならない。エレットリコの力は無に等しかったのだった。
「大声を出すなどはしたないぞ、エレットリコ! 国の次期・次元夢王ともあろう者が! ……まぁ、いい。とりあえず貴殿には、我のこの黄金のマントを継承してもらおうか! さぁ、観念するんだ!」
そう言うが早いか、エレットリコの服に手を掛け始める、スタチック王。
「い、嫌だぁぁぁぁああああ!! こ、この……ホモ親父がぁぁぁぁああああ!!」

クルーク神殿に、エレットリコの叫び声が響いた。

「……カーマイン護衛隊長、今エレットリコ皇太子様の叫び声が聞こえませんでした?」
「マゼンタ、君は新入りだから知らないだろうけど、皇太子の叫び声、泣き声、喘ぎ声のほとんどは国王の仕業だから、心配しないでいいよ。俺らは、クルース神殿の広い広い庭園を見張っていればいいのさ」
そう言ってクスクスと笑うカーマイン。
「……途中で何か喘ぎ声とか何とか聞こえたんですけど、それは空耳な事を全力で願いますよ、私」
肩を落とし、大きくため息をつくマゼンタ。物静かな性格だが、金髪を紫のゴムでポニーテールにし、女性用の軍服を身に着けている姿が、何とも愛らしい。
そして、大きくクルンとした瞳に、低いが上品な鼻、そして薄い唇が、その愛らしさを倍増させている。
そんな事もあり、マゼンタに“悪い虫”が付くのは、ごく日常的な事であった。
「——ねぇ、マゼンタ」
「何ですか、隊長?」
マゼンタがカーマインの方を振り向くと、カーマインはマゼンタの腕を力強く掴み、にやりと笑っていた。明らかに先ほどの笑い方とは違うという事がわかる。
「マゼンタは、僕の事どう思う? 僕、自分で言うのも何だけど、結構いい男だよ?」
そう囁き、マゼンタに妖艶な視線を送るカーマイン。
「……はい、確かにいい男性だとは思います。……ですがね、カーマイン護衛隊長」
マゼンタがそう言うと同時に、マゼンタの体は、カーマインを道連れに、空中に大きく飛び上がった。
「——!?」
カーマインが、声にならない叫び声を上げる。現在、二人の体は、地上から二十メートル離れた空中にある。
「私だって……一応は、軍人ですし、生粋の女ですよ? セクシャルハラスメントをされて、私があなたを生きて返すと思います?」
その刹那——岩をかち割る様な大きな破裂音がしたかと思うと、クルート庭園の中心に、まるでギャグ漫画の様な人型の穴が出来ていた。
「ちょっと過剰防衛過ぎましたかね……? でも、貴方がいけないんですよ? ……まぁ、とりあえず……下半身だけは動く様にしておいてあげましたから……感謝、してくださいね」
マゼンタは、笑った。
カーマインの先程の笑みも恐ろしいと言えば恐ろしかったのだが——マゼンタの笑みは、それ以上に恐ろしかった。

例えるなら……カーマインの笑みはカッター、マゼンタの笑みはチェーンソー、そんな感じ。
似ている様で、似ていない。

まるで……そう、次元が違うかの様な。


      *


クルーク神殿。
「——し、仕方が無いです……百歩譲って、とりあえず次元夢王の座だけは引き継いでやりますよ、父上……」
「そ、それは真か!? やっほーい、国王感激っ!」
国王——スタチック=マルクスは、先日まで王の座を引き継ぐ事を断っていた、息子・エレットリコ=マルクスの言葉を聞き、嬉しさのあまり飛び上がった。
が、しかし。
「で、す、が!」
「……は?」
「俺は、絶対に人を殺さない!」
「……な、なんじゃってぇぇぇぇええええ!?」

先日とは変わって、今日のクルーク神殿には、次元夢王・スタチックの叫び声が響いた。


人間が住む「人間界」の裏側には、「クルーク界」と呼ばれる、別の世界がある。
これは俗に言う、「異世界」や「魔界」と言った類の物だ。

人間には使命がある事を、皆さんはご存知だろうか。
——存在を愛せよ——
これが、人間界及び、我々人間達に課せられた使命、即ち義務である。
人間は、自分以外の存在——つまりは他人を愛して、新しい生命を創る。
我々人間は、「存在を創り出す」という、大変に異常な能力を生まれ持った、選ばれし存在なのだ。

全ての世界と全ての存在には、義務がある。これは、当たり前の事である。

そんな事だから、クルーク界の者にも、当然使命はある。
——存在を壊せよ——
これが、クルーク界の者に科せられた使命だ。
一見、大変恐ろしい使命に見えるかもしれない。
しかしこれは、我々から見た「存在を創り出す」という行為と同じ位に大切な事だ。
人間が存在を創りだし過ぎると、世界は存在だらけの歪な物になってしまう。
だから、壊すのだ。これは大切な事、そうだろ?
そして、この行為を日常的に行うクルーク界の者達の頂点に立つ者が、「次元夢王」なのである。


先ほど、スタチック=マルクス王が叫んだ意味、皆さんにはもうお分かりだろう。
エレットリコ=マルクスは、クルーク界の者に科せられた使命を放棄しておきながら、次元夢王になるという、何とも矛盾した事を言ってのけたである。

これは、異常な世界の物語。
きっと、誰よりも何よりも。


:後書き:
はい、ソフィアです^^
作者の第一作、「ノストラダムス!」では、現時点で550以上皆様に見てもらえていて、とても嬉しく思っています><皆様、本当に有難うございます。

さて、今回は、現代社会を舞台とした「ノストラダムス!」とは変わって、SFモノ的な感じの小説です。
題名からして、「何じゃこりゃ!?」な小説ですね、はい。

今後の展開を考えるあたり、最終的にエレットリコが悪の組織と戦うみたいな……(超王道)
…うーん、そんなつまらない内容書いても、たぶん誰も見てくださらないと思うので、やっぱり却下します((

誤字・脱字などございましたら、言ってくださると嬉しいです。感想やアドバイスもお待ちしています。

それでは、ソフィアでした〜。