ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: †神様の失敗† (元・とある天使と悪魔の話。) ( No.10 )
- 日時: 2010/07/20 15:55
- 名前: 白兎 (ID: WkxsA0sZ)
第四話
:紫丁香花:
今、誰かの声がした……よね。
したね、確実に。
だって後ろに気配感じるもん。
私は恐る恐る振り返った。
そこには、人間でいう
18歳くらいの天使の男の子がいた。
正直、かっこいいと思った。
私は確か17歳くらいって言われたっけ。
じゃあ割と近い—— いやいや、そんな事考えてる場合じゃないって。
「あのー……?」
そうそう、名前を訊かれていたんだった。
「あ、えっと。ルティアです」
その人は、「へー」と言っただけだった。
悪魔が此処にいることに、何か疑問感じないのかな。
「あ、あなたは?」
「俺? 俺はアードィール」
アードィールさんはにっこり笑って答えた。
いい人そうだな……。
それがアードィールさんへの第一印象だった。
そうだ。
この人に訊けば足の無い天使に会えるかも——
「あの、アードィールさん、訊きたい事が……
尋ねようとすると
アードィールさんは其れを止めた。
「アードィールさんじゃなくって、アディルって呼んでよ。
余所余所しいし。それに、長いじゃん」
まぁ長いけど。
でも余所余所しいって言ったって今日出あったばかりじゃ?
でも断る理由は無いし……。
「判りました。アディルさん」
「さんは要らないってば。あと敬語も」
「はぁ」
私は了解した。
「あの、それで、尋ねたいことがある…んだけど」
「どうぞ?」
「足の無い天使って……知ってる?」
アディルの表情が変わったように見えた。
「あぁ……知ってるけど……?」
「本当!?」
私は驚いて、体を前のめりにした。
「会えないかな?」
アディルはすこし考えた。
「確か、今日は用事があるとかなんとか……?」
「そう…なの……」
肩を落とす、とはこう言う事なのだろうか。
とにかく、すごく残念な気持ちだった。
「じゃあ、今度またおいでよ」
「えっ……!?」
「その時は会えるようにしとくからさ」
アディルの提案は嬉しいのだけれど、
また天界に来る勇気は……
「そういえば、ルティアっていつも何処にいるの?」
言える訳ないじゃないっすか!
魔界に住んでますだなんて……
「キミ、初めてみたけど……」
追い討ち!?
もう、黙っていても仕方が無い——
「私、悪魔なんですっ!!」
私はそう叫んで急いで逃げた。
「悪魔……?」
アディルはポカーンとした顔で呟いていた。
私は自分の出せる最高速度で走っていたから
近くに咲いていた紫色の花が激しく揺れていた。
ずいぶん後で知ったことだけれど
あの時見た花そっくりのライラックと言う花には
愛の芽生えという花言葉が在ったらしい。