ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: †神様の失敗† ( No.32 )
- 日時: 2010/07/30 12:21
- 名前: 白兎 (ID: dlZE4w6M)
第11話
:辻褄合わせ:
「じゃあ、ミリアの足は今……」
「他の悪魔の足になっているだろうね」
嫌だ。そんなの。
ミリアの足はミリアの物なのに。
「でも、違う可能性も無い事は無いんだ」
私は一歩アザゼルに近づく。
「どういう事ですか!?」
アザゼルは人差し指を立て、私の後ろを指した。
其処には、小さな小屋があった。
「あれは……?」
その小屋は随分古くなっていて、薄汚れている。
「あれは、山羊の足をすこし保管して置く所。
悪魔が取りに来るまでね」
アザゼルはイスから立ち上がり、その小屋に近づいていった。
そして何処からか鍵を取り出し、小屋の扉を開けた。
その中には、一組の足があった。
私は小さな悲鳴を上げた。
アザゼルは平然と話を続ける。
「あの足はね、取ってから随分と経ってるんだよ。
持ち主は一向に現れなくてね……」
その山羊の足には赫い血の様なものが付いていた。
私の肩が微かに震えだし、その震えは中々収まらない。
そんな私を見て、アザゼルは言った。
「ところで、お前の足は何故ない……?」
「……判らない」
そう答えるしかない。
本当に、何も判らないのだから。
アザゼルは、しばらく黙っていた。
何かを考えているようにも見える。
「お前、もしかして……」
其処までいうと、アザゼルは言うのを止めた。
「な、なに……」
「……立ち話もなんだ。中で話そう」
話が気になったので、私は頷いた。
……立ち話、ね。
あんたはさっきから座ってたけどね。
其処はアザゼルの家で、此処は応接室らしい。
私は黒いイスに腰をおろした。
「で? 話はなに?」
「さっき、言ったよな。
悪魔は山羊の足をしていると」
「うん、言った」
アザゼルはさっきと違って落ち着きがない。
まるで、何か触れてはいけない物に触れるような。
「……大抵の悪魔は、元は天使だったんだ。
それが堕天し、悪魔となる……判るか?」
私にはすこし難しい。
でも、判らないと言うと話が進まないので一応頷いた。
「天使のときは、人間に似た足を持っているが、
悪魔になれば山羊の足に変えねばならない……。
その時、元の足はどうすると思う?」
要らなくなる訳だから……
「元の足は切るんだ」
切る……。
ふと自分の足を見る。
自分に足は無い。
まさか……いや、そんな事…………。
「メル、お前は悪魔じゃないのか?」
アザゼルは私に問う。
その答えを私は知らない。
それが、忘れているだったとしても——