ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 神様の失敗 ( No.38 )
- 日時: 2010/08/05 12:43
- 名前: 白兎 (ID: QCkuis7p)
第13話
:悪魔ファイル:
(ネビロス視点)
私は今、とても怖い思いをしている。
状況説明なんかしていられる程の
心の余裕はないのだが。
目の前には、私の何倍もの大きさのドラゴン。
そのドラゴンに、生肉を食べさせている。素手で。
手まで喰われやしないだろうが……。
それでも恐い。
ようやくドラゴンに餌を与え終わった。
何故 私がこんな事をしているかというと——
「おー終わったか」
やって来たのは私の上司……と言えば良いのだろうか。
私よりも位の高い悪魔。
魔界のトップスリーであるお方だ。
名をアスタロトと言う。
「はい、終わりましたが……いつもはアスタロト様がやっておられるのですか?」
「いや、面倒だから一週間毎だけど」
ケロッと言うアスタロト様。
通りでドラゴンはあんなに腹が減っていたのか。
ドラゴンの食欲は凄まじかったのだ。
っていうかそれでいいのか?
アスタロト様はルティアや私ほど白くない、いやむしろ真っ黒。どう見ても悪魔だ。
けれど毒々しさはあまり感じない。
私がそんなアスタロト様の下で遣えているのも何かの縁なのか。
それで、何故私がアスタロト様の元へ遣って来たか。
気になったからだ。
何故、ルティアはあんなにも天使に酷似しているのか。
アスタロト様には、過去と未来を見通す力がある。
その力を使えば、知る事も可能と思った。
頼もうと此処へ来たが、逆にドラゴンの餌やりを頼まれてしまったという訳である。
「それで、アスタロト様。
今日はお願い申し上げたい事があり、参上した次第です」
「願いとは?」
「ルティアの過去を知りたいのです」
アスタロト様は黙ってしまった。
何故私はこんなにもルティアが気になるのだろうか。
もしかすると、本当は自分を知りたいのかもしれない。
「……それは止めた方がいい」
アスタロト様は私の目を見る事無く言った。
「……何故ですか?」
「さぁな。私にも解からんよ」
解からないのに何故、とも思うが
それは言う気には成れなかった。
仕方ないので話を代えた。
「……そういえば、何故ドラゴンを飼っておられるのですか?」
「いやー。人間どもに召喚された時さー、ドラゴンに乗ってるとカッコイイかなーって」
「……其れだけの為に。へぇー……。ドラゴンをですか」
「何か文句あんのか」
沈黙が流れた。
すこししてアスタロト様は話し出した。
「そういえばさぁ。
これ、ルシファーからくすねてきた物なんだけど……」
いいのか。ルシファーって魔界の王の事だよな。
アスタロト様と同じトップスリーだが
ルシファーはその中で最も強いんじゃ……。
アスタロト様が見せてきたのは何かのファイルのようだった。
「何ですか? 是は……」
「是は……閻魔帳ってヤツか?」
違うと思います。
ってか閻魔って誰だ。
確かブッキョーとかいうのに出てくる奴か。
「あー判った。悪魔の名前一覧だな、こりゃ」
アスタロト様の言葉はなにかわざとらしかった。
きっと、全部最初から知っているんだろう。
「でも、可笑しいんだよなー」
「何がでしょう」
「ルティアなんて悪魔は存在しない事になってるぞ。
此処にルティアの名前が載ってない」
私はアスタロト様から奪うようにファイルを取り、見た。
隅から隅まで隈なく見たが、ルティアなんて名前は何処にも載っていなかった。
そして、もう一つ、可笑しな点があった。
私は監視官だ。
全ての悪魔を知っているはずだった。
けれど、そのファイルには知らない名前が刻まれていた。
その名は——アドラメリク。