ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 神様の失敗 ( No.40 )
- 日時: 2010/08/07 16:45
- 名前: 白兎 (ID: QCkuis7p)
第14話
:真実:
メルとアディルとミリアは、行きと同じ道を帰り、天界へと還った。
(メル視点)
道行く天使たちがこちらを見て驚いている。
そういえば、私達は悪魔の姿になってたんだっけ。
すっかり忘れていた。
『メル、お前は悪魔じゃないのか?』
アザゼルの言葉が過ぎる。
私は、天使。
それ以外の何者でもない。
わたしは悪魔なんかじゃない。
ラツィエルの家の扉を勢いよく開けた。
バンッという大きな音がした。
扉を開けると、もちろんラツィエルがいた。
「ラツィエルっ……」
ラツィエルは嘘をついた。
ミリアの足は治らなかったじゃないか。
なら魔界に行く必要など端から無かったじゃないか。
あんな事を言われなくても良かったじゃないか。
おかげで頭の中はグチャグチャだ。
「……メル。アザゼルはお前をなんと言った?」
ラツィエルは、まるで全てを知っているかの様だった。
私は何故かその態度が気に入らなくて、怒るように答えた。
「『お前は悪魔』だと言われた……!」
ラツィエルは、少し小さな声で呟いた。
「やっぱり か」
やっぱり……?
何がやっぱりなの?
私が悪魔だと疑われたこと?
……私が悪魔だということ?
続けてラツィエルが言った言葉は
更に私を困惑させた。
「メル、私はこの天界中の秘密を知るもの。
私が握っているその秘密の中に、こんなものがあるよ」
「なに……」
声は何故かかすれていた。
「メリクエルと言う名の天使は存在しない」
メリクエルトイウナノテンシハソンザイシナイ
メリクエルと言う名の天使は存在しない——
じゃあ私はなに。
ちゃんと存在してる。
『メル、お前は悪魔じゃないのか?』
もしそうなら
存在しているのは
天使じゃない
悪魔
私はしばらく固まっていた。
目を大きく見開いて。
「そんなの……信じない。
そんなの、あんたの勝手な妄想でしょ?
ねぇ!? そうでしょ!?」
私はラツィエルに詰め寄った。
「妄想なんかじゃない。本当だ」
この前とは別人の様な顔。
酷く真剣な表情だった。
「だって……私は今此処にいる!
天使として……天使の姿で最初から存在してた!!」
自分の着ていた真っ黒な服を強く握り締めた。
その手は赤くなっていた。
「最初なんてものは無いに等しいんだよ。
第一、君は自分の最初を知っているの?」
自分の最初——
そういえば わたし 知らなかった。
いつからこうだったのかなんて憶えてなかったんだ。
「君は、天使じゃない。
悪魔だよ、メル、いや—アドラメリク」
アドラメリク
初めて聞いたはずの言葉なのに
誰かから言われたことのあるような——
それから
「 ————————————————— 」
頭の中は空っぽだったのに
口は狂ったように何かを叫んで。
それを自分で動かしているとはとても思えなかった。
その何かは
長い様な、短い様な
その何かが何だったのかは全く判らなかった。
「 ——————————————……。」
ようやく私の発狂が収まったのは
ミリアが優しく微笑んだからだった。