ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 神様の失敗 ( No.44 )
- 日時: 2010/08/08 14:26
- 名前: 白兎 (ID: QCkuis7p)
第15話
:180度≒360度≠0度:
「だ、大丈夫か……?」
ずっと後ろにいたアディルが声を掛けてきた。
大丈夫じゃねぇよと思いつつも頷いた。
自分はさっきまで奇声を発していたようなので
もう声がおかしくなってきてる。
でも、必死で声を出した。
「わたし……いま 何て言った?」
ラツィエルに訊ねた。
ラツィエルはすこし微笑んで
「いつか思い出すよ」
とだけ言った。
教えてくれればいいのに。
「そうそう」
ラツィエルが思いついたように言った。
「何で君が天使になったのか、知りたくない?」
知りたい——
私は頷いた。
「じゃあ、探しておいで」
「さ が す…………?」
何を?
「天使の悪魔を探しておいで」
私と逆……?
「君と同類の、誰かを」
「あっ」
突然阿呆な声を出したのはアディル。
「どうしたの?」
ラツィエルは優しげにそう聞いてあげていたけど
私はアディルを睨みつけていた。
「俺、それ知ってる気がする……」
アディルはあごに手をあてた。
「そうだね。君は彼女と会っていたね」
「えぇっ! 会ってたのぉ? いつ!」
「いや、君も会ってるよ。一回だけ」
「えっ……」
普段使わない頭をフル稼動させて
魔界での記憶を思い出す。
天使の悪魔……
彼女……
天使のような、白い——……
「私、会ってた……」
しかも魔界に行った時だけじゃなくて
もうずっと前にも 会ったことがあるような——
「ルティア」
アディルが小さく呟いた。
私はそれをすぐにその悪魔—いや天使の名前と判断した。
「じゃ、その格好じゃなんだし」
ラツィエルはその後「テヤッ」という奇声を発し
私達を天使の姿に変えた。
「え、でも……悪魔を見つけるんだから、魔界に行かないといけないんでしょ?
じゃあ悪魔の姿じゃないと駄目なんじゃないの?」
私はいきなりの変身に驚きつつも訊ねた。
「あーあれね。嘘★」
おいっ
私はその後ラツィエルを殴った。
……あれ、前にもこんな事が…………。デジャウ゛?
また私達は魔界に入った。
しかし、いつ来ても暗いな、此処は。
まぁ、その分 月が映えて奇麗だったりもするんだけど。
「アディル、今日ははぐれないでね〜」
「ぅう!! うるせー!」
「だってこの前も大変だったんだよ〜。見つけるの」
アディルは黙り込んでしまった。
虐めすぎちゃったかな。
でも、本当にこの間は大変だった。
全然見付からないんだもん。
っていうか、こんな広い所で探し出すなんて無理がある。
見付かるのかなぁ?
私と間逆で同類な天使……。
天使になった悪魔
悪魔になった天使
正反対 故に 同一
ふたりは出会う
それは必然であり、運命
ふたりは何かに導かれるように——
出会った。
「あ……」
目の前には、灰翼の天使。悪魔になった天使がいた。
「あなたは……」
ルティアという名のこの天使は
私を知らない。
「あ、アディル……」
アディルの事は知っているようだった。
「あなたは……でも何処かで……?」
「お久しぶりです。ティアイエルさん」
私は彼女に挨拶した。
彼女は目を丸くしている。
ティアイエル……私でも何のことなのか。
「さん」をつけているって事は——
きっとこの天使の名前の事なんだろう。
それは驚くほどすんなり出てきた言葉だった。