ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 神様の失敗 ( No.49 )
日時: 2010/08/09 16:01
名前: 白兎 (ID: QCkuis7p)



   第16話

  :ふたり:


 其処は月の灯る場所

魔界でふたりは出逢った。


(ルティア視点)


何にも無い
ただの平地。

そこでだらしなく寝転がってみる。

独りぼっち。


風がふいて、自分の翼が揺れた。
何枚か羽が落ちていった。

灰色の羽。

白黒ハッキリしろって怒りたくなった。
でも怒られるのも自分だからただ虚しくなるだけ。


あれ、私何してたんだっけ。

寝転がってたんだ。

何で寝転がってたんだっけ。

忘れた。


意味は無かった。


体を起こして立ち上がる。

そうしたら、向こうから声が聞こえた。

不思議に思って
声のする方へ


 「あなたは……」


目の前には——天使。


 「あ、アディル……」

その後ろにはアディルがいた。
少し前に会ったことがあった。

でも、アディルの前に立っている女の子は誰なんだろう。

初めて会った。

でも知っている気がする。

 「あなたは……でも何処かで……?」


何処かで会ったことがある そんな気がする。

不思議な感覚——


 「お久しぶりです。ティアイエルさん」


ティアイエル——

何だっけ。 私の事?


そうだ。

これは私の名前。


 「私はアドラメリク」

天使の女の子が言った。

アドラメリク。その名前も聞き覚えがあった。

いつだったかは判らないけれど。
随分前のことのように思える。


 「私、こんな姿だけど悪魔なんです。
  そしてあなたは——天使」


 「天使……?」


でも私、悪魔で……


 「ティアイエルさん」

悪魔だと言う彼女は、手を差し出してきた。

握手……?

私も手を差し出した。








    たくさんの光り——











 光が眩しくて思わず目を瞑っていた。

私が握っていた手は、真っ黒に変わっていた。

  「え……」

さっきまで灰色だった自分の羽は真っ白になっていた。


天使だった女の子は悪魔になっていた。


 「え……!? なん…で……」

悪魔の女の子は、微笑んで


 「これで良かったんだよ。きっと」


それだけ言ってふっと消えてしまった。
何処へ行くの? とも聞けなかった。


訳が判らないまま、その場に留まっていた。


 「ルティア……いや、ティアイエル。還ろう」

アディルがこちらを見た。

 「帰る……? 何処に?」

 「天界」

 「如何して天界に……」


 「其処が、君の本来の居場所だから」


いきなり過ぎて
全然話に着いていけない。


私は天使なの?
じゃあ如何して今まで……

私の思いを悟ったように
アディルは言った。

 「ラツィエルさんに教えてもらおう」 

誰かわからないけど

その人に聞けばわかるの?
さっきの不思議な感覚も全て——

私はアディルに着いていくことにした。