ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 神様の失敗 ( No.50 )
日時: 2010/08/10 15:32
名前: 白兎 (ID: QCkuis7p)



    第17話

  :堕天の記憶:

闇の中から
子ヤギを連れた一人の少女が現れた。

(メル視点)


さっきの場所からワープして
着いたのは此処。
アザゼルの家。

忘れ物を取りに来たんだ。


 「アザゼル——」

声を張り上げて呼んだ。

少ししてアザゼルがやって来た。

 「また遣って来たのか。
  ミリアの足は戻せないと言っただろう」

 「違うの。私は悪魔になった。
  だから、忘れ物を取りに来たの」

アザゼルは驚いた顔をした。
でも、すぐに表情は戻って「へぇ」と呟いた。



 「忘れ物を取りに来るのは今度で良いんじゃないか?」


この声はアザゼルでも私でもなかった。

後ろから聞こえた、誰かの声。


 「ネ、ネビロス様っ!!」

 「ネビロス様? 誰、それ」
 「魔界の監視官をしておられるお方だ。偉い人なんだぞ」
 「え、偉い人なの!?」


いきなり現れたこのネビロスさんとやらは偉い人だったらしい。
確かに長いマントを羽織っていて偉そうに見えなくも無い。
でも、そんなお偉いさんがなんで此処に……。


 「如何して……ですか?」

偉い人らしいので一応敬語を使っておいた。


 「お前は本来、もっと早く堕天するはずだった。
  それを延ばしたことは重罪にあたる」

そうなのかもしれない。
過去の自分が何をしたのか知らないけど
自分は本当はもっとはやく悪魔になるはずだったんだ。
それを狂わしてしまったのは、いけない事なんだと思う。


 「だから、お前は自分のした事を知って来い」

 「知る……? どうやって」


 「未来と過去を見通す力を持つかたを知っている。
  その方の力を少しの間 分けて貰えば済む事だ。
  その方は快く了承して下さった」















 その人は「アスタロト様」と言うらしい。
さっきネビロスさんに聞いた。
如何でも良いけど、「様」付け好きだなー。

連れてこられたのは、そのアスタロトさんの家。

 「豪邸っすね」
ネビロスさんに言った。
 「まぁ、悪魔階級はトップクラスだからな」
その人はネビロスさんよりも位が高いみたい。


 で、通された無駄に広い部屋にそのアスタロトさんはいた。

 「へー。君がアドラメリクちゃん?」

ちゃん付け?

 「あー。はい。そうみたいです」

今のところ敬語使ってるけど、いつ敬語にするのを忘れるか判らない。
ネビロスさんの時も、地味に忘れてたし。


 「その子はミリアちゃんだっけ?」
 
 「はい」

アスタロトさんはミリアをじっと見た。

 「じゃあこの子がアドちゃんのファミリアーかぁ」

アドちゃん=アドラメリクちゃん?
略語かっ
まぁそれは判るとして。
ファミリアーって?

 「あの、ファミリアーって……」

 「ああ。魔女で言う使い魔だよ。悪魔版使い魔?」

 「はぁ」


そう言えば、ミリアと出会ったのっていつだったっけ?

まぁ、後で判るか。


 「ファミリアーってどの悪魔にも付くんですか?」
 「いや?付いたり付かなかったり色々さ」

アスタロトさんって気取らないな……。
こういうのが本当の大物なのか?
でも部下は大変そう。

私はこっそりネビロスさんに聞いた。
 
 (ねぇ。この人に仕えてて疲れない?)
 (……) 何も言わず頷くネビロス。



 「それで……アスタロトさん。過去を知るって……」

 「ああ。もう始める?」

こんなにアッサリ言われても困る。
ネビロスさんが疲れるのも判るな。

でも、知らなきゃいけないんだと思う。

だから

 「はい——」


そう言って一秒もしないうちに
 私の頭の中に何かが流れてきた。

それは酷く醜い映像——それが私の過去だったんだ。