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Re: 神様の失敗 ( No.54 )
日時: 2010/08/11 17:14
名前: 白兎 (ID: QCkuis7p)



    第18話

  :メルの過去:


ある時 人間界を離れ

天使になった少女がいた。

それがメルだった。


他界し、空へ着いた時
天使か悪魔か決められる。

判定基準はあやふや。
決める者の好き嫌いで決まる場合もある。

ただ、基本的には善良な心を持っていれば天使。
悪意ある心を持っていれば悪魔となる。


メルは天使となった。
善良な心の持ち主と判定された訳だ。



それからメルは天使として暮らしていた。

そんなある日——


 「お前は善良な心など持っていない。偽善者だ」


メルはそう言われた。

これは上級天使からの言葉だった。

そして、再度判定。


結果は——悪魔。


メルは、当然驚いた。
自分は天使だと思っていたから。

 
 「偽善なんかじゃ在りません!! 
  私は天使です!!」

その言葉は受け入れてもらえなかった。



そして——堕天の命を受けた日はやってきた。

悪魔としての新たな名前はアドラメリク。


でもメルは悪魔にはなりたくなかった。
ずっと天使のままでいたかった。


でも命令に逆らう事はできない。

メルはその綺麗な足を切った。

切ると言ったって刃物なんて使わない。
他の天使に魔法で。

だから痛くも何とも無い。

だけど

メルの目からは涙が零れていた。


後は、魔界に行くだけ。

足を無くした天使が魔界でしばらく暮らせば
真っ白な翼は真っ黒なこうもりの翼に変わって
白く綺麗な肌は黒く染まっていく。
そして、ヤギの足をつければ—— それはもう悪魔。


メルは追い出されるように天界を出た。


その時——メル以外の者が其処にはいた。


 「あなたは……?」

メルはその天使に訊ねた。

 「私は…ティアイエルというみたい」

それは、天使になったばかりのルティアだった。
羽が生えそろってない事から、おそらく天使と判定されてすぐだと判る。

 「あなたは?」
 「私はアドラメリクらしいね」
 「あの……わたし、天界への行き方を忘れてしまって……」


メルはその時、とても醜い考えが浮かんだ。



 「え、天界に行くの?」

 「え?」
 
 「あなた、悪魔じゃない」
 
 「え? わたし、悪魔?」

 「そうだよ。
  それにあなたの名前はティアイエルじゃない」

 「え、そうだったの。聞き間違いしちゃったのかな〜」

 「そうじゃない?」

 「教えてくれてありがとう!」

 「魔界はあっちだからね」


その天使は元気に手を振って去って行った。
魔界に向かって。


メルはその天使を騙した。


そして、天界に戻る。

そうすれば天使は同じ数だけいることになり——


メルは再び天使になった。


メルはルティアを堕天を免れる為の生贄としたのだ。