ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 神様の失敗 ( No.58 )
- 日時: 2010/08/12 16:57
- 名前: 白兎 (ID: QCkuis7p)
第19話
:償い:
「……わたし……あの子を……」
思わず呟いていた。
さっき全部の過去を思い出したから。
思い出した——だから
——笑いが止まらなくなりそう。
「ハハハッ」
「どうした」
「私、悪いことなんてしてない」
そう。そうだよ。
私、悪い事なんてしてないんだから。
「はぁ?」
何でかネビロスさんは呆れ驚いた。
「だって、あんなの言い掛かり。嘘。私は天使なんだから」
私は天使だったのに。
偽善者なんかじゃなくて。
なのにお前は悪魔だって、誰かが言うから。
私は悪魔なんかじゃない。天使なんだから。
「天使が天使になって何が悪いの。
悪いのは私を堕とそうとした奴らでしょ。
違う?違わないでしょ。ねぇ」
「メル、それは違う」
子供みたいな
大人みたいな
不思議な声——誰?
「もしそれが本当に言い掛かりで。メルが天使だったとしても。
ルティアさんを騙した事で、あなたはその時、本当に悪魔になった」
その声は——ミリア?
「ミリア? 何で喋って……」
今までずっと黙っていたアスタロトさんが声を出した。
「ファミリアーは喋れるんだよ」
「そういう事だよ」
ミリアは喋れたの?
じゃあどうして今まで……。
「ねぇミリアちゃん。メルの記憶を消したのは……キミだよね」
ミリアは少し笑って
ゆっくりと頷いた。
「流石はアスタロト様ですね。
まぁ正確に言えば……メルとルティアさんの、ですが」
何で記憶を消したの? ミリア……。
「メル」
何……?
「もうメルの記憶を消す事はしない。
だから……メルはずっと過去を背負って過ごしていなよ」
「どういう事……?」
「自分の過去を恥じて、ずっと苦しみ続けな。
それがあなたに出来るルティアさんへの償い」
苦しむ事が償い?
如何して? 如何いう事?
「……そんじゃ、アドちゃんも過去を思い出した事だし。
かーいさーんっ!!」
アスタロトさんが両手をパンッと叩いた。
「ほれ、早く」
背中を押されて、アスタロトさんの家から追い出された。
「ミリア……。私、どうしたらいいの?」
「メルは……生きてればいいの」
*
その頃、アスタロト家——
「良いんですか? アスタロト様」
ネビロスはアスタロトと話していた。
「ま、良いんじゃないの〜?」
ネビロスは溜息をついた。
「だって、本来なら何か罰が下るはずでしょう?」
「……今回のケースだと……「消滅」か」
「……じゃあ、あれですか。ミリアの言う罰で勘弁しておくって訳ですか」
「しょうゆうこと〜」←すかさず醤油を取り出す。
ネビロスはまた深い溜息をついた。