ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 神様の失敗 ( No.61 )
- 日時: 2010/08/20 18:40
- 名前: 白兎 (ID: QCkuis7p)
第20話
:天使と悪魔のその後:
(アディル視点)
「……じゃあ、私はメルって子に騙されて悪魔になったと」
「そういう事だね」
ルティアは、ふーんと言っただけだった。
さっき、魔界にいたルティアは天使になった。
そして今、ラツィエルさんに過去の話をしてもらったという訳だ。
「ふーんって……それだけ?」
「え? うん」
「メルの事、恨んだりしないの?」
ルティアは口元に指を置き、うーんとうなった。
「そりゃ、騙したのは酷いなーとは思うけどさ
騙されたこっちも悪いと思うし」
相当なお人よしだな。
そんなだから騙されるんだろ、と思ったけど口には出さないでおいた。
「それに、魔界は魔界で楽しかったし♪」
「なんて楽天的な……」
こればかりはつい口に出してしまった。
でもルティアは聞いていないようだった。
「ネビロスとかーリリスさんとかー。みんな良い人だったし」
「でも悪魔なんだろ?」
「悪魔だからって悪い悪魔とは限らないよ」
いや、悪いから悪魔なんだと思う。
「ねぇ。ルシファーって悪魔知ってる?」
確か魔界の王とか言う……。
俺は頷いた。
「その人ね、天使の頃は明けの明星と謳われた天界で最も美しい天使だったの」
でも、とルティアは続けた。
「天界戦争で負けて、天界から追放されて悪魔になったの」
俺はその話の続きより何でルティアがそんな話を知っているのかって方が気になる。
「だから、結局の話。勝った方が正義で負けたら悪って訳」
「でもさぁ、それ、違うと思うぞ」
「何で」
「だって、誰かを騙すのは悪いことだろ?」
「そうだけど……」
ルティアは黙ってしまった。
でも、一理あるのかもしれない。
全てがそうと言う訳でもないけど。
人間界の宗教を巡っての争いはそんな感じだったと思う。
「で、ルティアはこれからどうすんの?」
「ルティアじゃなくてティアイエルだけどね。
そうだなー……何しようか」
ラツィエルさんが優しげな口調で言った。
「ゆっくり考えればいいと思うよ。
天使の命が尽きる事は無いから」
「そうだね〜。そうしよっ」
この二人はのどかだな〜……。
*
「良かったの? メル」
「うん」
だってこれは、ミリアの足だから。
今から少し前——
私達はアザゼルの家に向かっていた。
「また来たのか」
「今度こそ、忘れ物を取りに来たの」
アザゼルは何も言わず小さな小屋を開けた。
その中には、もちろん山羊の足。
「ねぇ、これどうやって付けるの?」
「ああ。俺が付けてやるよ」
「じゃあお願い」
そう言って、私はミリアを差し出した。
アザゼルは驚いていた。
「……何だ?」
「だから、足をつけて欲しいの。ミリアに」
「え、な、何で!?」
ミリアはアザゼル以上に驚いていた。
「まぁ、お前が良いならそれで良いが」
ミリアが何か言おうとしていたみたいだけど
そんな事はお構いなしに、白いもやが私達を襲った。
もやが晴れると、ミリアには見事に足が生えていた。
「アザゼル、ありがとう」
私はアザゼルにお礼を言って去って行った。
———
「これは、罰って事にしとく」
「そっか」
ミリアはまた優しく笑って。
それにつられて、私も笑った。
私は悪魔になった。
足の無い変な悪魔に。
きっと辛いこともあると思う。
でも、頑張れる。
頑張れるから。
だから—— 生きるよ。ミリアと一緒に。