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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 神様の失敗 −本編終了− ( No.75 )
- 日時: 2010/08/25 18:04
- 名前: 白兎 (ID: QCkuis7p)
②
あそこにいる天使がその悪魔なんだとすぐ判った。
足のない天使だったから。
さっき私は、アザゼルの家から、そして魔界から抜け出して、天界に来ている。
私には翼が無いのに、何で飛べるかって?
それは私にも判らない。
昔から。言葉を話せるし、空も飛べた。
何でかは、ずいぶん後なってから気付いたんだった。
話し掛けると、その悪魔は驚いた顔をした。
「な、何で山羊……」
こういうときは嘘をつきましょう。
「迷ってしまったみたいで……」
魔界と天界をどう迷えというのか。
でも、そんな苦しい言い訳をその悪魔は信じた。
「ありゃりゃ。大変だねぇ。
これ、食べる?」
その悪魔は木の実を差し出してきた。
わたしはお礼を言って、ひとつ貰った。
それから、その悪魔とはたくさん話をして、笑いあった。
本当に、この天使が悪魔なんだろうか。
「……どうして悪魔にならないの?」
ここはもう、直球でいこう。
それを聞くと、悪魔はぼそりと答えた。
「悪魔になりたくない。天使でいたいの」
小さな声だった。
「どうして、悪魔になりたくないの?」
「判らない」
悪魔は言った。
やはり元気のない声だ。
「でも……」
悪魔は続けた。
「天使を悪魔にしちゃって……それが、嫌で……」
悪魔は泣き出した。
悪魔は泣かないと思っていたのですこし驚いた。
「どうしよぅ……」
悪魔の涙は増えるばかり。
私は、山羊語でもない変な言葉をくちにした。
すると、辺りには白い靄ができて。
その靄が晴れると、悪魔は言った。
「あれ、今までなに話してたんだっけぇ」
私はメルの一部の記憶を消した。
まさか、自分が魔法を使えるとは思っていなかった。
それよりも、自分が何故その力を使おうと思ったのかも
判らないでいる。
とりあえず、私はこれからこの悪魔と一緒にいる事にしたんだ。
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