ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Episode4 恐怖 ( No.13 )
- 日時: 2010/07/18 16:30
- 名前: 絶櫨 ◆kaIJiHXrg2 (ID: aeLeTDX9)
混乱したまま迎えた夜明け、水平線の上に1隻のこの船では無い船が見えた。
それを察知したのは、見張り番の黒髪の少年。
「せんちょー、海軍来たけどどうします?沈めてきましょうか?」
まず驚くのはその少年の口から出た言葉だ。
普通なら、敵船が来たと告げるだけだが、自らで向いて沈めてこようか?
とまでなると大きく違う。
恐らく敵は海兵、そこらの軟弱な人間とはワケが違う、魔法を操り、非情な性格の猛者ばかり。
ましてや、少年の敵う相手ではない。
そんな事もお構い無しに下から船長が少年に指令を告げる。
「良いよ、遊んでおいで、ブラッディ」
ブラッディと呼ばれた少年は、見張り台から飛び降りると、海面を滑走し、海軍のへ船へと迫る!
流石に海軍も気が付き、1km以上船と少年との間合いを取って大砲、黒魔術などで反撃するが、まるで少年は猫のように身軽に大砲の弾の上に飛び乗り、魔術による攻撃を避け、10秒足らずで海軍の船へと到達し、内部での戦闘を開始した。
ここからでは見えないが、恐らく海軍が殺されているのだろう、海軍の船のマストが紅く染まっている。
その瞬間、恐怖に駆られ、混乱が一気に解けた。
「ねえ、船医さん」
近くで模型のお立ち台に立ってタバコを吸っている船医に話しかけ、状況を聞く。
船医はどうも、本当に骨格標本のような骨らしく、しばらく突いているとこちらを向いた。
「素晴らしい、恐怖と言う物は混乱を解く効果が……」
「無いよ、普通なら恐怖から混乱するんだから」
「おお、それもそうですねえ」
骸骨は頭を掻く仕草をして、ソフィアへと迫る。
「君は甲板へ行くんだ、船長に挨拶して来い」
その言葉はもはや命令、体が勝手に動き、船内の通路を意思とはまったく関係無しに歩き回ると甲板へ出た。
それを見て、昨夜の少女がニコリとこちらを向く。
その笑は、明らかな作り笑いでゾッとするかのような悪意を内側に押し込んでいるかのようだった。
「ねえ、アリソン。船長って何処?多分紫色の髪した変わった人だと思うけど」
ククッとアリソンは不気味に笑い、驚くべき言葉を発した。
「紫色の髪の毛……?それは副船長のヴァムよ。船長は私」
…………しばらく時間を沈黙が支配した。
待てよ、船長になるのならあのヴァムと言う人の方だろうと思ったが、何故こんな華奢な女の子が……?
そう思うと同時に、海兵船から一筋の波がこちらの船目掛けて突っ込んでくる。
「ブラッディ、お帰り。ソフィアが目覚ましたよ」
どうやら、私もそれなりの実力者扱いの様だが、有り得ない。
多分人違いだ。
「多分、貴方達が探しているのは私じゃない。人違いだよ」
その言葉にまた船長は不気味に笑う。
「そうか、じゃあ君の記憶を戻してみよう。そうすれば思い出すと思うからさ」