ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Episode5 キオク ( No.17 )
- 日時: 2010/07/20 18:04
- 名前: 絶櫨 ◆kaIJiHXrg2 (ID: aeLeTDX9)
「記憶を……戻す?無理よ、私の記憶は過去7年くらいしかない、普通の人間だから」
その言葉を聴き、再び船長はクックック……と笑う。
まるで、その答えが出てくることを知っていたかのように説明を始めた。
「ソフィア、君の記憶は君自身の特性によって消してあるみたいね、私の覚えが正しければ君の特性は"喪失"戦闘向きではなかったし、戦いが嫌いだった君のやりそうなこった」
その言葉の途中、ポケットから2本のケーブルの繋がった脳のような物を取り出すと、アリソンは首筋に突き刺した。
「君の記憶の本をこじ開ける。鍵が錆付いてるだろうケド、関係ないね」
そういって、ソフィアの頭にもう片方のケーブルを突き刺した。
突き刺された時の事は覚えていない、ただ、目が覚めたらここに居たというような感じで広い草原に立っていた。
どうやら、ここは私自身の頭の中らしい、見たことも無いような動物が駆け回っている……。
何を考えているんだろう……私。
「ここからどうするのかな……、本がどうこう言ってたけど、まさかこの草原の土中に埋まってるなんてことは無いよな……」
取りあえず適当に掘ってみる。
土は普通に固い粘土の様だ、どうも骨が折れる。
ひたすら彫りまわす事3分、見事にカンは全部ハズレ、手は泥だらけになるはずなのだが土くれ一つ付いていない。
どうやら、脳内だからだろう。
「やっぱり手こずってるね、そこを掘りまわしても意味は無いよ、私も一応協力できるけど、私の精神の中じゃないから手伝えるのはチョットだけだよ」
地面から……声がする?
声のした地面を凝視していると、小さな山が出現し、人の形へと変形した。
「うそ……そんな事出来るの?魔法って」
海賊船船長は陽気な口調で答える。
先ほどとは打って変わって悪意も感じられなければ、殺意も無い。
「う〜ん、一応ね。脳内のガードが厳しくなったら離脱するから自分で頑張って」
……ここまでいい加減な奴だったとは微塵にも思わなかったが、むしろそのいい加減な感じが安心できる。
敵に回ることは無いだろう。