ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Episode1 真夜中の訪問者 ( No.2 )
- 日時: 2010/07/17 13:13
- 名前: 絶櫨 ◆kaIJiHXrg2 (ID: aeLeTDX9)
ある夏の夜のことだ、月の光が平凡な村の家々を照らす。
その光景が壊される瞬間が直ぐそこまで迫っている事も分からずに、人々は眠りについていた。
その、脅威の足音が聞こえるまで、人々は気が付かず、眠っている。
村の東外れにある海岸に、この時代には珍しい1隻の木製の船が止られた。
その船からは、2人の人影が陸へと歩くと落ち葉が鳴らす音が周囲に危険だと知らせた。
その足音は、村の方へと近づいていく。
その足音が1歩鳴るたびに、村の人間は本能で目を覚ます。
とてつもない存在感を発する何者かがこの村で何らかの行動を起そうとしていると、ここで始めて気が付く。
気が付くものの、もう遅い。
しかし、村の小屋には興味を示さずその足音は真っ直ぐ村長屋敷へと向かっていった。
村長屋敷の中で、私はとてつもない存在感に当てられ目が覚めた。
ガンガン!
その気配の本人が戸を叩く。
しばらくしてデブの村長がブツブツと愚痴を言いながら戸を開けた。
太った人間に限って警戒心が薄いものだ。
「誰だね、こんな夜中に尋ねてくる礼儀知らずは——…」
その言葉が終る前に訪問者が冷静な口調で口を開く。
「ここに居る奴隷に用がある、貴様のような能無しに用は無い。ソフィア・S・ダクティルを出せ」
屋根裏部屋で私はその言葉を聞いて、驚いた。
私の様な人間のクズとでも言うべき奴隷に何の用が……?
「フン、面白い事を言う。あの奴隷はわしの持ち物だ、やるわけなかろ。さあ、帰った帰った」
その言葉の直後、ドンッ!と言う音と共に村長が跪いた。
その音は村長の頬を掠め、後ろの窓を軽く突き破るどころか壁に大穴を空け、
家の中を外の生ぬるい空気で満たした。
小柄な方の影が指をクルクルと回すような動作をしている、今何かしたのは小柄な方……?
「おっと、指が滑った。次は君の脳天にこれが直撃するかもね……?」
落ち着いた口調が恐怖心を書き立てる。
村長は屋根裏部屋へ行くと、私を盾として海岸へと逃げた。
それを2人は黙って見ている?
目的は私では無いのか……?
そんな考えの最中、ドン!と言う銃声が私の胸に穴を開ける。
見れば鮮血が噴出し、意識は見る見るうちに遠のいていく……。
「フン、貴様はまったく。迷惑な客を引き寄せおって!」
心臓が撃ち抜かれ意識が朦朧とする私に、村長は蹴りを入れている様だ。
不思議だ、痛くもなんとも無い。
その直後にした、ゴリィッと言う音と共に私の意識は途絶えた。
死んだんだな、私は……。