ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

ある記録者の話 ( No.3 )
日時: 2010/07/17 23:52
名前: 時代 (ID: A7lopQ1n)

立ったのは戦場。壊したのは世界。狂ったのは帝国の思想。
負けてはならないのだ、と皇帝は言う。例え多くの命が失われようとも、勝てばそれは正義となるのだ、と。
……ありえない。消された者は結局は敗者だし、生き残った者は勝者。どんなに卑怯な手を使おうとも、生き残る事が出来なければ結局は負けたも同然なのだ。と、戦場に立つ者は言う。そうしなければ、この血と泥に塗れた戦場では戦い続ける事さえも叶わないのだと。
……それを、彼女が従う帝国の敵軍が聞いたらどんな顔をするのだろうか。また何かしらの理由をこじつけて攻撃するか、それともそんな事は分かっていると一蹴するか。
恐らく、後者の確率の方が高いだろう。彼らは何よりも戦争の狂気とそれに伴う破滅も理解しているから。そもそも、この戦争において何よりも破滅を望んでいるのは、我らが帝国の皇帝なのだろう。その下にいる者は、自分達も戦争の持つ狂気に呑まれかけている事を知っているから皇帝の思想に逆らえないのだ。……その思想さえも、既に狂ってしまっている事にも気付かずに。
かく言う自分も、戦争と人の持つそれを何より理解しているつもりでそれに呑まれようとしている。……否、既に呑まれているのか。
……破滅を望むのが皇帝なら、何よりも大きな狂気を持っているのは、そしてそれに呑まれてしまったのは、皇帝が最も信頼し、そして皇帝を何より冷めた目で見るあの将軍ではないのか。と、気付いた。
聞いた話に依れば、彼女は確かに戦争と言う名のただの大量殺人を愉しんでいるらしい。……捻くれた兵士から聞いただけの話だから真偽は定かでは無いのだが。
しかし、誰も帝国……否、皇帝が悪とする敵国の将が自軍の将の半身だとは思わないだろうし、そもそもその皇帝が既に死へと
向かっている事など、誰も予想がつかなかっただろう。この記録者も、そして彼女逹も、知る事は無かったのだが。
…………「死に魅入られた者は、死が叶わない」


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結局書き直し。
それでも微妙って言う。泣けてくる!←