ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 【短編】もしも、報われるなら【集】 ( No.6 )
日時: 2010/08/01 23:03
名前: 箕遠 ◆rOs2KSq2QU (ID: MeGdyxZe)

【決して人には見えない愛とは】



 ————午前2時。足早にマネージャーと帰ってきた私。とりあえず、マネージャーが「足元気をつけて」と(おそらく)スカートの裾を直しながら発する言葉を聞き流してみた。するとマネージャーは話を聞かない私に不満があったのか、無言で電気のスイッチを押した。そうして2人で、突然つけられた蛍光灯の光に眉を顰めながら部屋に入る。
 そして——————目の前の光景に、驚愕した。
 いや、驚いたのはマネージャー1人。私はその光景にたいした驚きも感じず、平然と靴を脱いで部屋に入った。マネージャーはそんな私と正反対に、ヒステリックな悲鳴をあげる。


 「なっ……何なのよこれ……部屋が何で荒らされてるのよ……っ」


 そう、部屋は荒らされていた。元々生活用品は少なめな私だけど、それでもここまでぐちゃぐちゃに乱されていると、多少物が多く見える。目の錯覚っぽくて、ちょっと面白い。


 「けっけけけけけけ警察……は、早く電話しないと、またスキャンダルとかがっががががが」


 しかしマネージャーはこの空き巣まがいを本気にしたらしい。呂律の回らない話し方で独り言を呟く。そして、めまぐるしい勢いでポシェットの携帯電話に手を伸ばした。もしかして警察に電話するのだろうか、もしそうだとしたら、止めなくちゃ。だって、私とあの人の唯一の意思疎通を、こんな奴に邪魔されては構わないし。


 「佐中さん、警察は良いよ」
 「……でっ、でもっ! これは、アイドルの部屋に泥棒って……ストーカーかもしれないじゃない!」
 「大丈夫、これ自分でやったのだから。…………気にしないでよ?」
 「……そ、そう……」


 1度目より強い調子で2度目は言葉を投げかけた。すると、しぶしぶという風にマネージャーは番号を打とうとした指の動きを止める。その様子を見て私はほっとした。
 早くマネージャーを安心させるために、いつもと変わらない微笑みを浮かべる。マネージャーは心配そうにこちらを見ると、私の微笑みに気が付いたらしく、苦笑した。本当に大丈夫? ともう一度聞かれたので、大丈夫だってば! と強気に返す。
 そんなやり取りを交わすと、マネージャーは最後に私の乱雑な部屋を一瞥し、室内に居る私に背を向けた。


 「……じゃ、リザ。くれぐれも用心してね? ……ホントの空き巣とか、ストーカーが来たら危ないから……」
 「分かってるって。アリガト、佐中さん。じゃーね、おやすみ」
 「うん、じゃあ……おやすみなさい。また明日」


 がちゃり、という思い金属質の音と一緒に、マネージャーは帰った。その音が響き終わった瞬時、私は急いで鍵を閉めると、リビングへと一目散に駆け出す。そしてガラスで出来たテーブルの近くを2分ほどうろうろし、鷹のような目つきで彼からのメッセージ
を探した。


 「あ、あったっ」


 歓喜にまみれた声をあげ、私はそれを手に取る。私が座り込んだそこには、私のお気に入りのぬいぐるみの足元に私の片手ほどの大きさの封筒があった。とりあえず手早く電気をつける(、急ぎすぎて電気をつけてなかったのだ。我ながらア.ホらしい)。急ぎつつ、しかし丁寧に封筒から一枚の手紙を取り出す。そして手紙に書いてある文字に全神経を集中させた。


 「……いつも見てるよ……愛してるよ……愛しの、リザ……! 愛し……愛しだってっ!」


 愛しの2文字が目に入った瞬間、私は狂喜し立ち上がった。今の私の脳内はお花畑、いやハートの乱舞である。イコール幸せ真っ只中なのだ!
 くるくると手紙を胸に抱えて回っていると、はらりと封筒から何か紙切れが落ちてきた。何だろうと思いしゃがみこんで見てみると、なんとそれは私の隠し撮りされた写真だった。全ての写真の中で私が笑って映っている。


 「あ、これ前プライベートで遊びにいった時の……こんなところまで、付いてきてくれてるんだ……嬉しいなっ愛されてるなっ、私」


 愛の告白の文章プラス隠し撮りプライベート写真とくれば、ついつい話も鼻歌交じりになるもんでしょ。私はそう思いつつ、写真と手紙を高鳴る鼓動と共に胸に押し付け、最高級の笑顔で言った。


 「ああ! ホント誰なんだろ! こんなに私を愛してくれてるのは!」





******

それはストーカーだろと主人公に突っ込みたくなる箕遠であった(真顔)。
どうだ、これが気持ち悪い病みラブ? ホラーラブ?ですよ。
……いや、大声で言うことじゃないわコレ(・ω・`)

今度はゴシック書きたいなー