ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

第一話 ( No.2 )
日時: 2010/07/18 22:05
名前: 耀 ◆63r2U4AfbM (ID: nmGiLBrS)

「三左崎(みさざき)骨董」は寂れた商店街の一角にあった。

数年前までは肉屋だとか魚屋だとか色々な店が朝早くから店を開いていたが、今では朝でも昼でも一切そのシャッターが開くことはない。
それには理由があった。近隣に大型デパートが建てられた為だ。
次々に店仕舞いをしていった仲間達はその骨董屋を見て「どうせ此処も…」と囁くのだった。


三左崎骨董は明治初期に創立された、今と変わらぬ小さい店だった。
しかし小さいながらも細々と経営を続け、現代の店主、三左崎尚希(みさざきなおき)で5代目になる。
尚希は弱冠二十ながらもきちんと店を切り盛りしていた。

何故尚希のような青年が店主かと言えば、彼が13歳の時、両親が事故で他界。それからは店主の座を尚希の父に譲ったはずの祖父が店を切り盛りしていた。
その祖父も昨年の初夏に他界した。両親には兄弟がいなかった為、尚希は一人で店を営んでいかなくてはならなくなったのだ。

「うん、これで全部磨けたかな」

元々骨董品が好きだった尚希は嫌がることもなく店を継ぎ、骨董品に囲まれながら毎日を送っていた。




これからの迫り来る未来を全く予期せずに——。