ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 黒夜叉伝記 〜必殺技募集中〜 ( No.72 )
- 日時: 2010/08/04 17:43
- 名前: るりぃ (ID: w4zhaU6v)
Scene15『壊レタ人形』
物心ついたときには、すでに両親はいなかった。
死んだか、それとも彼女を捨てて行ったのか。
いずれにせよ、彼女を保護してくれる者はなく、彼女はその容姿のせいか、常に間引きの対象にされていた。
彼女を庇う者はなく、彼女もそれが当然だと思っていた。
彼女がそこまで育ったのは、子どもは労働力という考えがあったからである。
そのため、彼女は早朝から深夜まで、みっちりと働かされ、僅かな食事しかもらえなかった。
だが、それも彼女が食べれるだけの食糧があったからだ。村の食糧が少なくなれば、当然の如く彼女の取り分はなかっただろう。
だが、遅かれ早かれ、いつかはそうなるだろうと彼女は気付いていた。
だから、村が飢饉に見舞われ、普段奇異の眼で見て蔑んでくる大人たちが突然、優しく声をかけ、手を引いてきたことにも別段驚きはなかった。
(……裏山、いや、それより、もっと遠くの場所だな…。)
少なくとも、戻っては来れない場所に置き去りにされるのだろうと簡単に予想出来てしまう。
それは、すでに足腰の立たなくなった老婆が山に捨てられたことを知っていたから。
働けなくなった者から見捨てられていくのは当たり前のように行われてきたこと。
「疲れただろ。ちょっとここで待ってな。今、水を持ってきてやる。」
ようやく辿り着いたときには、さすがに足が棒のようになっていた。
仕事を終えたあとにこれだけ歩かされれば当然だ。
しかも、彼女の歩幅は大人のそれよりもずっと小さい。
朽ち果てた小さなお堂の前で手を離され、連れてきた男が帰っていく。
生贄、という言葉が彼女の頭に浮かんだ。
(それも、いいかもしれない…。)
誰にも彼女自身を求められることもなく、ただ労働力として働くことを強いられてきた。
このまま生きていくことより、贄となってしまうことの方が魅力的に思えた。
(私が死んでも、何も変わらない…。)
ただ労働力がひとつ減るだけだ。
お堂のボロボロになった階段に腰掛けて、目を閉じる。
きっと、もう開けることもないだろう。
(…でも最後に、一度だけでも…)
思考がまとまる前に、彼女の意識は闇に沈んでいった。
To be contineu…