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Re: 黒夜叉伝記 〜必殺技募集中〜 ( No.76 )
日時: 2010/09/12 08:52
名前: るりぃ (ID: lc..8kIC)

Scene18『運命』

その頭領が、レイカを連れてきた男だということに、レイカは少々面食らった。

「頭領というから、もっと高齢の翁かと思ってたのだが…。」

少なくとも、彼女の村では、長は年長者がなるものだった。
それを言えば、長らしいこの男は呵々と笑った。

「ヨボヨボだったら仕事が出来ねェだろ。それに、これが俺の≪本当≫じゃないかもしれないぜ?」

にやりとイタズラっぽく笑った男の意味するところをレイカが知るのは、もう少しあとの話だ。
取り敢えず、当分は知識と教養、体力を身に付けるように命じられ、レイカは新入りの見習いとしてその里に迎え入れられた。
忍見習いといっても、いきなり暗殺の技術を教えこまれる訳ではないらしい。
取り敢えずは武家の屋敷に忍び込んでも怪しまれない程度の教養が必要なのだと、先輩格の狢に言われた。

「しかしお前も厄介な人に拾われたもんだな。」

「そうか?」

育った村では一生させてもらえない勉強が出来て、さらに食事もつく。
それだけで天と地ほど差があるのだが、彼女に言わせれば違うらしい。

「確かに生きることに事欠かないが、忍になれなんて言われてあっさり頷けるほどいい印象ないだろ、この仕事は。
この世界に『はいそーですか』って入って馴染んでるアンタがどうかしてる。」

「へぇ。」

「普通は何かしら拒絶するもんだぞ?ま、私も含め、こんな仕事をする奴らはたいてい他に居場所がなくなった奴らだから、そのうち諦めていくんだけどな…。」

汚れ仕事の捨て駒だからなぁ、と空を仰ぎ見た彼女もまた、親を亡くして行き場を失い、ここに来たらしい。

「頭領は気まぐれだからな。たまにふらりとお前みたいなのを拾ってくるんだ。
だがいつ戦場に投げ出されるか分からない。——…生き残りたければ、励めよ。」

という訳でこれ宿題、と差し出された課題に冷嘉はどーも、と受け取った。
この里にいる子どもは、親も忍だったり、冷嘉と似たような境遇だったりと様々だ。
だが、ひとつ彼らに共通して言えるのは、いつ死んでもおかしくない割に笑っていることだ。
それが狢の言う諦めからくるのか、ここで教え込まれたせいなのか分からない。

けれど、自分は。

(欲しいと言われたから来ただけだ。)

生きたかった訳じゃない。
あの長が自分に飽きれば、今度こそ消え果てるのだ。
それまで、人形らしく働く。
ただそれだけのことだった。

To be contineu…