ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: −Alive− #01up ( No.4 )
日時: 2010/07/22 15:36
名前: 獏 ◆jOx0pAVPUA (ID: og6.uvq4)

#02 夜の学校

一日が過ぎるのは早い。
そう言ったら友人に「お前じいさんかよ」と笑われてしまった。
でも時が過ぎるのを早く感じたのは確かで、現にさっきまで朝かと思えば今は既に放課後。
「俺も歳かなぁ」
なんてことを呟きながら一人家路を歩く。
自分の足音だけが大きく響き、あまりの人気のなさに少しだけ怖くなる。
「なんか、人少なくね? 地味に怖ぇ」
口の中の飴玉はどんどん小さくなっていく。

急な突風。
思わず目を瞑るほどの風だった。
「すげー風……」
次に目を開けた時、俺は目を見開いた。
木の葉の散った道に立つ、人物に目を奪われた。

そこには大きな男を抱える
綺麗な薄紫の髪の女子高生がいた。
しかも同じ高校の制服を着ている。

「……嘘だろ。夢だ夢だ。俺はきっと疲れているんだ」
そう頭を振ってさっき見た光景を掻き消す。
そしてまた同じ場所に目を向けた。
そこには何もいない。
散った木の葉すら既に飛んでいってしまっていた。
「家帰って寝よう。ヤバイな、俺の脳内」
そう呟いて俺は家路を急いだ。

   *

「ごっめーん!! 会長、見られちゃったかも」
薄紫の長い髪が揺れ動く。
「……仕事中の様子をか? 相手は誰だ」
カリカリとペンを動かす音は止まらない。
溜息混じりのその問いに少女は答える。

「多分、会長が最近気にしてた“音無 紅逆”って子かな。金髪のオッドアイだったし」

その言葉でペンの動きが止まり、書類に向いていた目が少女に向けられる。
「アイツか……。仕方ない。今日にでも“処分”してしまうか」
顎に指をあて、少し考えるような素振りを見せた。
「音無 紅逆……か」

   *

「あ゛ーっ!! 最悪!!」
俺が何故こんなに取り乱して走っているか。
しかも夜道を学校に向かって。
理由は一つ。
今日返却日のCDを自分の机の中に忘れたから。
「何今日、俺厄日!? 生徒会長に出会うし、CD忘れるし」
時刻は午後九時。
不気味に光る電灯、誰もいない道。
俺の恐怖心を煽ぐには十分だった。
「怖ぇ……。夜の学校とかありえねぇよ」
学校に辿り着いた俺は、既に閉まっている門を上り、校内へ侵入する。
そして見つけたのが一つの光。
西校舎の三階に灯るそれに俺は安堵の息を漏らした。
「ラッキー。まだ警備員さんいるじゃん」
その光はちょうど俺のクラスに近く。
早く取りに行って家へ帰ろう、そう意気込んで俺は階段を上りだした。
すぐ三階に着いた俺は教室に入り、自分の机を漁る。
「お、あったあった」
手にCDを持ち、教室を出ようとした。
その時だった。
ガシャン、と窓の割れるような大きな音が耳に入る。
しかもそれなりに近い場所だ。
「……泥棒さんと遭遇なんて体験はしたくねぇから」
冷や汗を流しつつも、俺は思い切ってドアを開けた。

そこにいたのは

泥棒さんでも
幽霊でも
野良犬でもない


銃を手に持った我が高校の生徒会長様と
あの時見かけた薄紫の髪の少女でした。


「……会長、さん?」


俺の戸惑った声が静かに廊下に響いた。