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Re: −Alive− #02up オリキャラ募集 ( No.7 )
日時: 2010/07/24 09:27
名前: 獏 ◆jOx0pAVPUA (ID: og6.uvq4)

#03 夜の学校②

「えーあのーえーっと……。我が高校の会長様ですよネ?」
これなら泥棒さんの方が何百倍もマシだった。
ただでさえ普段から怖い会長が銃を構えてるなんて、もう最恐としか言いようがない。
「俺、忘れ物取りに来ただけなんで。はい、さようなら」
会長に背を向け逃げ出そうとした時だった。

「ちょっと、会長!! 一般生徒いるじゃないッスか!!」

何者かに肩をがっしりと掴まれ逃げようにも逃げれない。
俺は肩を掴んだ人間の顔を見て唖然とした。
「ぼ、牡丹?」
茶色のおかっぱ頭にオレンジの瞳。
きちんと着られた同じ制服。
完璧に見覚えがある。
そこにいたのは俺の親友である、暁 牡丹(アカツキ ボタン)だった。
「ん? って、紅逆!? なんでお前が此処にいんだよ」
牡丹も肩を掴んだ人物が俺だとは思っていなかったようで大きなリアクションを見せた。
しかもよく見れば、牡丹の手に持たれているモノって“チェーンソー”じゃないのか?
あ、きっとこれ夢だ。俺の夢。
ちょっとかなりリアルだけど夢夢夢夢……「夢じゃないぞ」
会長は俺の希望を一言で打ち壊した。

「……てか、会長さん。俺の頭になんて物騒なモン突きつけてんスか」

そう。
俺の後頭部に当てられた鉄の塊、別の名を拳銃。
「ちょうどいい。コイツも一緒に処分してしまうか」
会長さんの口から漏れる聞き捨てならない言葉。
処分、って何だよ。
もう恐怖で顔が引きつってきてる。
「え、ちょっ、会長!? コイツが“リビングコープス”なんですか!?」
牡丹は俺を指差しながらそう叫んだ。
リビングコープス、日本語略にすれば“生きる屍”
いや、俺は今こうして生きているし、死んだ覚えもない。
勝手に他人を殺さないで欲しい。
「あの、会長さん方。俺、生きてますけど? 死んだ覚えないですけど」
それに、生きた屍なんてこの現実世界にいてたまるか。
そんなものがいたら、俺は恐怖で家から出れねぇよ。
「だから、帰らせてくれません? 牡丹も何時までも肩掴んでんなよ」
俺は牡丹の手を退けて、廊下を進もうとする。
しかしそれは薄紫の少女によって阻まれた。
「ちょっとー!! 君を処分しないと私達仕事終わんないのー!!」
てか、この子もこの子でなんつー危ないモン持ってるんだ。
彼女の手には大きな鎌。
自分の身長を遥かに超すような。
「だから!! 俺は死んだ覚えも屍になった覚えもねぇ!! 人違いだ」
そう言って事の原因である会長さんを睨む。
「なんかお前らにはお前等でいろんな事情があるとは思うが、それに俺を巻き込むな」
そのまま歩き出そうとした。
しかし何故か体の力が抜け、そのまま膝から崩れ落ちる。
「は?」
それと同時に胸に感じる強い痛み。
目を向ければ貫通する鎌が見えた。
「っ、何、しやがんだ。何時から……日本はこんな危ねぇ国になったん、だよ」
廊下を濡らす自分の血。
目の前がぼやけ、鎌の所持者の顔すらまともに見れない。
「会長ーこのまま殺っちゃていいー? 私、もう帰りたいです」
肉の切れる音と共に鎌は抜かれ、揺らぐ体は地面へと倒れる。
「馬鹿が。もし人間だったらどうする」
確認してないのに、と呟く会長に俺は言葉をかける。
「だ、から……俺は、違ぇって……言ってんじゃねぇかよ。て、めぇの耳はただの穴、かよ」
悪態つきながら何とか意識を保とうとする。
牡丹の慌てている姿が目に入った。

……てか、あれ?
普通さ、胸刺されたら死なね?
こんなに長く意識保ってられる訳ねぇよな。
……まじで俺、ゾンビかよ。
いやいやいやいや、それはない、てか認めねぇ。

俺が脳内高速回転を進めているうちに会長の俺を見下ろすように立っていた。
「……普通、リビングコープスは自分の命の危機を感じれば理性を失い襲い掛かって来る筈。
だがコイツにそんな様子は見れない。だからといって人間の筈はない」

「お前はまだ、生きているからな」

会長の声に困惑が見られる。
「おい、一縷(イチル)。お前はどう思う」
一縷と呼ばれた薄紫の彼女は指を口元にあて、唸り考える。
「私の鎌で切られたら人間も屍も、どっちにしろ存在していられるわけがないよ。
ってことは、この子はそのどちらでもない存在?」
真面目な顔でそう言う彼女はさっきまでのふざけたような雰囲気はない。
「どちらでもない存在。……仕方ない。しばらく此方で預かるか」
その会長の言葉を聞いて俺の意識は途切れた。
てかさ、コイツ等に人を労わる気持ちってないのだろうか。
お前等がのん気に話している間、俺、めっちゃ死にそうだったんだけど。
そんなことを考えながら、
俺の意識は深い暗闇に落ちていった。