ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: −Alive− #03up オリキャラ募集 ( No.9 )
日時: 2010/07/26 16:49
名前: 獏 ◆jOx0pAVPUA (ID: mXej9PvR)

#04 怪我

俺、死んだのかな。
いや、死んだら意識も消える筈だから……。
そうか。アレは全部夢だったんだ。
今の俺はきっと自宅のベッドですやすや寝てるんだ。

「起きなよ」
……あぁ。
俺の希望は奴の一言で掻き消された。
「何時まで寝てるつもり? 遅刻は許さないよ」
いい。もういっそのこと死なせて欲しい。
だってありえないだろ。
あの生徒会長が俺を起している。
つまり、あの出来事は夢じゃないし、俺のいる場所もきっと自宅じゃない。
このまま死んだふりでもしてみるか。
そんなことを考え始めた俺の頭に何か硬い物が振り下ろされた。
「いだっ」
ゴッという音と共に俺はゆっくりと瞼を開いた。
開きゃなきゃ幸せだったな、俺。
目の前には銃を頭に突きつける生徒会長がいた。
「……オハヨウゴザイマス」
思わず片言になるほどの驚き。
やっぱり昨日のは夢ではなかった。
それに、うん。胸もしっかり痛いしね。
「会長さん、胸、めっちゃ痛いんスけど」
「知らない。責めたいならあそこにいる馬鹿を責めろ」
会長の指差した先を見れば、あの薄紫少女がいた。
つまり俺を刺し殺そうとした張本人。
「えーっと。ゴメンね?」
冷や汗を流し、俺と目を合わせない薄紫少女。
「あ、の。えっと、うん!! 自己紹介するね!! 私は宇佐原 一縷(ウサハラ イチル)君の一個上の学年だよ」
完璧に開き直った一縷、なんか軽く苛立ちを覚える。
でも俺は常識は一応あると自己認識しているから自分も名乗る。
「俺は音無 紅逆。一年D組。アンタにぶっ刺されて今めっちゃ胸が痛い人物」
「すみませんでした」
一縷は深々と頭を下げた。
まぁ、俺も今かなり嫌味を言ったからな。

「君等、俺を遅刻させる気? 早くしないと頭ぶち抜くよ」

会長の言葉で俺は着替えをしようとするが、此処が自宅じゃないことを思い出す。
それに制服は昨日刺されたので使い物にならない。
「……これ、学校の備品。しばらくはそれでも使ってなよ。俺は先に教室へ行く」
部屋を出た会長を一縷が追い、俺は部屋に一人残された。
「……てか此処、学校の生徒会室じゃん。アイツ、学校に住んでんのかよ!!」
俺の叫び声は生徒会室に悲しく響いた。

   *

「あー痛ぇぇ……。動くだけでめっちゃ痛い」
傷口は塞がっているが、少し動くだけで痛みが走りまともに活動が出来ない。
「何、どしたのさ?」
友人が気遣うように尋ねた。
「んー? 昨日、力加減をしらない馬鹿な先輩にしごかれただけ」
間違ってはいないだろう。
しごく、というにはやり過ぎだと思うが。
「大事になー」と言って、友人は校庭へ向かっていった。
次の授業は体育。
もちろん俺が参加するわけはない。
つまり今は教室で一人待機している状況だ。
静か、そうとしか言いようがない。
「あー……暇ー。てか、俺、人間なのかな」
あんな深手を負って生きていられる筈ねぇよな。
「もしかしてマジであの、何だっけ? リビングコーパスなのかな。あ、でも、だとしたら会長に殺されてるか」
そんなことをボソボソと呟いていると背後に気配を感じたが時既に遅し。

「紅逆ー。やっほぉい」

ギュッと抱き締められる。
それと同時に全身を襲う悪寒と鳥肌。
視界に入るのは風に揺れる赤い髪。
「は、離せ馬鹿!! 俺の鳥肌がすげーことになてるから!!」
俺を抱き締めたのは幼馴染で昔から長い付き合いのある親友。
倉林 夜行(クラバヤシ ヤコウ)だ。
コイツはいつもこうして俺に抱きつく癖がある。
此方としてはかなり迷惑な癖だ。
「お前クラス違うだろ? 授業は?」
「抜けてきた」
「なんで?」
「紅逆のテレパシーを受け取ったから」
語尾に星がついている。
殴りたくなるからその言い方は止めて欲しい。
「テレパシーなんてお前に送るくらいなら宇宙人に送るわ」
俺はそう言い捨てる。
「……紅逆」
いきなり真面目な顔になる夜行に俺は小首を傾げた。
そして目線を下ろせば外されるボタン。
「……夜行。お前、何してんの? 俺、お前にそっちの趣味があるとは思えないんだけど」
軽く引き気味の俺と夜行の目が合う。

「この怪我。どうしたの?」

目は胸元に巻かれ、少し血の滲んだ包帯に向けられている。
ヤベ。ばれた。
そう内心焦るがどうしようない。

俺はただただ呆然としていた。